低リン血症性くる病

(ビタミンD抵抗性くる病)

執筆者:Christopher J. LaRosa, MD, Perelman School of Medicine at The University of Pennsylvania
Reviewed ByMichael SD Agus, MD, Harvard Medical School
レビュー/改訂 修正済み 2024年 10月
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低リン血症性くる病とは,低リン血症,小腸でのカルシウム吸収不良,およびビタミンD不応性のくる病または骨軟化症を特徴とする遺伝性疾患である。通常は遺伝性である。症状は骨痛,骨折,および成長障害である。診断はリン,アルカリホスファターゼ,および1,25-ジヒドロキシビタミンD3の血清中濃度による。治療法はリンとカルシトリオールの経口投与であり,X連鎖性低リン血症に対してはブロスマブを投与する。

家族性低リン血症性くる病は,通常はX連鎖顕性(優性)の形質として遺伝する;他のパターンの家族集積もみられるが,まれである(1)。

後天性の散発例は,ときに良性の間葉系腫瘍を原因とし,その腫瘍から近位尿細管におけるリンの再吸収を抑制する液性因子が産生される(腫瘍性骨軟化症)。

総論の参考文献

  1. 1.Bitzan M, Goodyer PR: Hypophosphatemic rickets.Pediatr Clin N Am 66(1):179–207, 2019.doi: 10.1016/j.pcl.2018.09.004

低リン血症性くる病の病態生理

観察される異常は近位尿細管におけるリン再吸収の減少であるが,これにより腎臓でのリン喪失と低リン血症が発生する。この異常はフォスファトニンと呼ばれる循環因子に起因する。遺伝性低リン血症性くる病における最も重要なフォスファトニンは線維芽細胞増殖因子23(FGF-23)である。腸管でのカルシウムおよびリンの吸収も低下する。骨石灰化障害の原因は,カルシウム欠乏性くる病(ビタミンDの欠乏症および依存症を参照)におけるCa低値や副甲状腺ホルモン(PTH)高値ではなく,リン低値と骨芽細胞の機能障害である。1,25-ジヒドロキシビタミンD3値は正常または微減であることから,変換過程における異常が推測される(正常であれば低リン血症になると1,25-ジヒドロキシビタミンD3値は上昇する)。

低リン血症性くる病にはいくつかの病型がある(遺伝性低リン血症性くる病の病型の表を参照)。高カルシウム尿症を伴う遺伝性低リン血症性くる病(hereditary hypophosphatemic rickets with hypercalciuria:HHRH)の一病型は,近位尿細管に発現する2c型ナトリウム・リン共輸送体(NaPi2c)の遺伝子変異により発生することが知られている。この状況ではリン輸送の異常と低リン血症により,1,25-ジヒドロキシビタミンD3濃度が適切に上昇することで,高カルシウム尿症を来す。

腫瘍性骨軟化症は,小児においてくる病に伴う低リン血症の非遺伝性の病因となっている。この疾患は,線維芽細胞増殖因子23(FGF-23)を異所性に産生する腫瘍の随伴現象によって引き起こされ,リン酸尿や遺伝性低リン血症性くる病に類似した合併症を引き起こす。

表&コラム
表&コラム

低リン血症性くる病の症状と徴候

本症は,低リン血症単独から発育遅滞と低身長を伴う重度のくる病または骨軟化症まで,一連の異常から成るスペクトラムを構成する。通常は患児の歩行開始後に発症し,O脚やその他の骨変形,偽骨折(骨びらん領域に対し不十分に石灰化した類骨で置換された以前の疲労骨折領域を示す骨軟化症のX線所見),骨痛,および低身長を呈する。筋付着部の骨増生により運動制限を来すこともある。

食物性ビタミンD欠乏症にみられる脊椎または骨盤のくる病,歯のエナメル質欠損,およびテタニーは,低リン血症性くる病ではまれである。

HHRH患者は腎結石症や腎石灰化症で受診することもある。

低リン血症性くる病は頭蓋縫合早期癒合症の一般的な代謝性の原因である。

低リン血症性くる病の診断

  • カルシウム,リン,アルカリホスファターゼ,1,25-ジヒドロキシビタミンD3,副甲状腺ホルモン(PTH),FGF-23,およびクレアチニンの血清中濃度

  • リンおよびクレアチニンの尿中濃度(リンの尿細管再吸収量を算出するため)

  • 骨X線

  • しばしば遺伝子検査

血清リン濃度は低値となるが,リンの尿中排泄量は高値である。カルシウムおよびPTHの血清中濃度は正常で,アルカリホスファターゼ濃度はしばしば上昇する。低リン血症によるカルシトリオール産生の刺激は起こらない。典型的には,カルシジオール濃度は正常である一方,カルシトリオール濃度は正常から低値である。

カルシウム欠乏性くる病では,低カルシウム血症はみられるものの,低リン血症は軽度であるか全くみられず,尿中リン濃度が上昇することもない。

骨X線が有用である。

低リン血症性くる病の病型は,家族歴,臨床像,臨床検査(血液および尿),および画像検査を併用した結果に基づいて診断する(遺伝性低リン血症性くる病の病型の表を参照)。特定の遺伝子パネルまたは全エクソーム配列決定法を用いた遺伝子検査を(しばしば遺伝専門医へのコンサルテーション下で)行うことが,診断の確定に役立つ。

血清FGF-23濃度の上昇がみられる病型は鉄欠乏症により増悪するため,それらの病型の患者では血算および鉄検査の適応となる。

低リン血症性くる病患者の家族は保因者または罹患者である可能性がある。常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)疾患の患者の同胞がその疾患を有している確率は25%である。PHEXの病的変異を有する母親から生まれた男児がX連鎖性低リン血症(XLH)を有する確率は50%であり,常染色体顕性(優性)低リン血症性くる病(ADHR)の罹患者である親から生まれた小児がADHRを有する確率は50%である。

家系内に低リン血症性くる病が判明している者がいる場合には,出生前および着床前遺伝学的スクリーニングを勧めることができる。

XLHまたはADHRの家族歴が判明している人の子と常染色体潜性(劣性)型の低リン血症性くる病患者の同胞には,骨折の既往のほか,発育不良,骨変形,およびくる病(X線検査で確認できる)の特徴について評価を行うべきである。カルシウムおよびリンの血清中濃度も測定すべきである。追加検査には,ビタミンD,インタクト(完全分子型)PTH,およびアルカリホスファターゼの測定を含めることができる。カルシウム,リン,およびクレアチニン濃度の随時測定または24時間蓄尿を含めた尿検査も行うことができる(遺伝性低リン血症性くる病の病型の表を参照)。

低リン血症性くる病の治療

  • リンおよびカルシトリオールの経口投与

  • X連鎖性低リン血症および腫瘍性骨軟化症にはブロスマブ

低リン血症性くる病の治療は,溶液または錠剤としての中性リン酸塩の投与による。リンを補充すると,イオン化カルシウム濃度が低下するとともに,カルシトリオールの変換が阻害される結果,二次性副甲状腺機能亢進症と尿中へのリン喪失の増悪を来す。そのため,ビタミンDをカルシトリオールとして経口投与する。ただし,これはHHRHまたはHHN(低リン血症,高カルシウム血症,および腎石灰化症)には適用されず,これらでは1,25-ジヒドロキシビタミンD3濃度が上昇しており,カルシトリオールの投与は有害となる可能性がある。

リンの投与量は,骨成長の獲得または骨痛の緩和のために増量が必要になる場合がある。下痢のためにリンの経口投与が制限される場合もある。治療により,血漿リン濃度の上昇,アルカリホスファターゼ濃度の低下,くる病の治癒,ならびに成長速度の改善が得られる。高カルシウム血症,高カルシウム尿症,それに腎機能低下を伴う腎石灰化症のために,治療が複雑になることがある。治療中の患者には頻回のフォローアップ評価が必要である。

ブロスマブは,X連鎖性低リン血症(XLH)および腫瘍性骨軟化症(TIO)に対する第1選択の治療法として上述の従来の治療法に取って代わった,抗FGF-23モノクローナル抗体である(1)。血清リン濃度を正常化させるのに必要であれば,用量を漸増させてもよい(2)。

鉄欠乏症は,骨におけるFGF-23の発現を亢進させ,FGF-23濃度の上昇やFGFタンパク質の分解障害により状態を悪化させることがある。したがって,FGF-23高値の低リン血症状態にある鉄欠乏症患者には鉄の補充が不可欠である。

TIOの成人は,この疾患の原因となっているFGFを産生する間葉系腫瘍を切除することで劇的に改善しうる。ブロスマブは,腫瘍が切除不能または不顕性の患者に使用されて成功を収めている(3)。

頭蓋縫合早期癒合症は,一部の症例で外科的矯正が必要となる。

治療に関する参考文献

  1. 1.Imel EA, Glorieux FH, Whyte MP, et al.Burosumab versus conventional therapy in children with X-linked hypophosphataemia: A randomised, active-controlled, open-label, phase 3 trial.Lancet.2019;393(10189):2416–2427.doi:10.1016/S0140-6736(19)30654-3.Clarification and additional information.Lancet.2019;394(10193):120.doi:10.1016/S0140-6736(19)31426-6

  2. 2.Sandy JL, Simm PJ, Biggin A, et al.Clinical practice guidelines for paediatric X-linked hypophosphataemia in the era of burosumabJ Paediatr Child Health.2022;58(5):762-768.doi:10.1111/jpc.15976

  3. 3.Jan de Beur SM, Miller PD, Weber TJ, et al.Burosumab for the Treatment of Tumor-Induced Osteomalacia. J Bone Miner Res.2021;36(4):627-635.doi:10.1002/jbmr.4233

要点

  • 腎臓でのリン再吸収の減少により,尿中へのリンの喪失と低リン血症が発生する。

  • リン濃度の低下と骨芽細胞の機能障害に起因して骨石灰化障害がみられる。

  • 発育遅滞,骨痛および骨変形(例,O脚),ならびに低身長がみられる。

  • 高カルシウム尿症を伴う低リン血症性くる病(hypophosphatemic rickets with hypercalciuria:HHRH)の患者は,腎結石症や腎石灰化症で受診することもある。

  • 血清リン濃度低値,尿中リン濃度上昇,ならびにカルシウムおよび副甲状腺ホルモンの血清中濃度正常の所見により診断する。

  • リンの経口剤に加え,HHRHとHHN(低リン血症,高カルシウム血症,および腎石灰化症)以外ではビタミンD(カルシトリオールとして)の経口投与により治療する。

  • X連鎖低リン血症および腫瘍性骨軟化症の一部の患者には,ブロスマブを使用する。

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