早老症(progeria)

(Hutchinson-Gilford症候群)

執筆者:Christopher P. Raab, MD, Sidney Kimmel Medical College at Thomas Jefferson University
レビュー/改訂 2023年 2月
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早老症は老化が促進されるまれな症候群であり,小児期早期に発現し若年死を招く。

早老症は,細胞核の分子構造的足場となるタンパク質(ラミンA)をコードするLMNA遺伝子における散発的な突然変異により引き起こされる。このタンパク質に異常があると,細胞分裂によって核が不安定になり,あらゆる体細胞の早期死が引き起こされる。

死亡時年齢の中央値は14.6歳であり,原因は典型的には冠動脈および脳血管の疾患である。インスリン抵抗性および動脈硬化が起こる可能性がある。注目されるのは,正常な老化に関連するその他の諸問題(例,がんリスクの増大,変形性関節症)が存在しないことである。

早老症の症状および徴候は生後2年以内に発現し,具体的には以下のものが挙げられる:

  • 発育不全(例,低身長,歯の萌出遅延)

  • 頭蓋顔面異常(例,頭蓋顔面部の不均衡,小顎症,かぎ鼻,大頭症,泉門開大)

  • 老化による身体的変化(例,皮膚のしわ,禿頭,関節可動域減少,強皮症に似た固い皮膚)

早老症の診断は通常外見から明らかであるが,部分的な早老症(例,肢端早老症,変形性早老症)やその他の発育不全の原因との鑑別が必要である。

ロナファルニブは,異常なプロジェリンまたはプロジェリン様タンパク質の蓄積を予防する経口薬である。小規模研究では,寿命が最大2.5年延長することが示されている。

支援団体を利用できる。

他の早老症様症候群

早期老化は他のまれな早老症様症候群の特徴である。

ウェルナー症候群は思春期後の早期老化であり,毛髪の減少および高齢疾患(例,白内障,糖尿病,骨粗鬆症,動脈硬化)の発生を伴う。ロスムンド-トムソン症候群は,発がんリスクの増大を伴う早期老化である。どちらもRecQ型のDNAヘリカーゼ(正常ではDNAの修復を行う)の異常につながる遺伝子変異に起因する。

コケイン症候群は常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)疾患で,ERCC8遺伝子(DNAの除去修復に重要)の突然変異に起因する。臨床的特徴としては,重度の発育不全,悪液質の様相,網膜症,高血圧,腎不全,皮膚の光線過敏性,知的障害などがある。

新生児早老症様症候群(Wiedemann-Rautenstrauch症候群)は,潜性遺伝(劣性遺伝)する老化の症候群であり,2歳までに死亡する。

その他の症候群(例,ダウン症候群エーラス-ダンロス症候群)も,ときに早老性の特徴を有する。

より詳細な情報

親または養育者に有用となりうる英語の資料を以下に示す。ただし,本マニュアルはこれらの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。

  1. Progeria Research Foundation: A resource dedicated to finding a cure and effective treatments for progeria that offers information, resources, and support through its web site

  2. Share and Care Cockayne Syndrome Network: A resource that provides support group to families and professionals with an interest in Cockayne syndrome

  3. Rothmund-Thomson Syndrome Foundation: A resource that provides education about Rothmund-Thomson syndrome and related disorders and supports clinical research

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