高ホモシステイン血症は，動脈および静脈血栓症の素因になりうる。
（血栓性疾患の概要も参照のこと。）
高ホモシステイン血症は，血管内皮細胞を損傷することにより，動脈血栓症および静脈血栓塞栓症（VTE）の素因になる場合があり(1)，その原因としてフリーラジカルの産生増加が考えられる。しかしながら，交絡因子を十分に考慮に入れると，この関連はもはや有意とならないことが複数の研究によって明らかにされている(2)。さらに，心疾患を併発したVTE患者(3)と主要な危険因子のないVTE患者(4)を対象としたビタミン補充のランダム化試験においても，イベント発生率低下との関連が認められなかった。したがって，静脈および動脈血栓塞栓症の患者にホモシステインの測定をルーチンに行うことは推奨されない。
ホモ接合体のシスタチオニンβシンターゼ欠乏症では，血漿ホモシステイン濃度が10倍以上に上昇する。ヘテロ接合体の欠乏症やその他の葉酸代謝異常（メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素欠乏症など）では，測定値の上昇は軽度である。高ホモシステイン血症で最もよくみられる原因は，以下の後天的なものである：
小麦粉に葉酸が添加されている地域では，葉酸欠乏症はまれである。
心血管疾患または血栓塞栓症が疑われる患者で空腹時血漿ホモシステイン濃度を測定することにより，この異常が確定する。
総論の参考文献
1.Undas A, Brozek J, Szczeklik A.Homocysteine and thrombosis: from basic science to clinical evidence. Thromb Haemost 2005;94(5):907-915.doi:10.1160/TH05-05-0313
2.Ospina-Romero M, Cannegieter SC, den Heijer M, Doggen CJM, Rosendaal FR, Lijfering WM.Hyperhomocysteinemia and Risk of First Venous Thrombosis: The Influence of (Unmeasured) Confounding Factors. Am J Epidemiol 2018;187(7):1392-1400.doi:10.1093/aje/kwy004
3.Ray JG, Kearon C, Yi Q, Sheridan P, Lonn E; Heart Outcomes Prevention Evaluation 2 (HOPE-2) Investigators.Homocysteine-lowering therapy and risk for venous thromboembolism: a randomized trial. Ann Intern Med 2007;146(11):761-767.doi:10.7326/0003-4819-146-11-200706050-00157
4.den Heijer M, Willems HP, Blom HJ, et al.Homocysteine lowering by B vitamins and the secondary prevention of deep vein thrombosis and pulmonary embolism: A randomized, placebo-controlled, double-blind trial. Blood 2007;109(1):139-144.doi:10.1182/blood-2006-04-014654
高ホモシステイン血症の治療
栄養補助食品
血漿ホモシステイン濃度は，葉酸，ビタミンB12，またはビタミンB6の栄養補助食品を単独または併用で使用することで正常化する場合がある；ただし，この治療により動脈または静脈血栓症のリスクが低下するかどうかは明らかにされていない。
