ホメオパシー

執筆者:Denise Millstine, MD, Mayo Clinic
レビュー/改訂 2021年 10月
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1700年代末にドイツで起こったホメオパシーは,似たものが似たものを治すという理論(類似の法則)に基づいた医療体系である。大量に投与するとある一連の症状を引き起こす物質を,ごく微量からほぼ存在しない量投与することで,その同じ症状が治ると信じられている。ごく微量の投与が,体がもつ治癒の機序を刺激すると考えられている。

治療は,症状や健康状態とともに,パーソナリティや生活習慣などの個人的な特徴に基づいて行われる。ホメオパシーは体のエネルギーの流れを回復することを目的としている;科学または生理学の原理に基づくものではない。

ホメオパシーで用いられる治療薬は自然に存在する物質,例えば植物の抽出物や鉱物などに由来する。極度に低濃度のものが特定の方法で調剤される。ホメオパシーの治療薬は濃度が薄ければ薄いほど強力であるとされる。希釈されすぎて有効成分の分子が測定不能である溶液も多い。例えば,30Cの希釈は,1のものを100倍に希釈してそれを30回繰り返すもので,最終的に1 x 1060倍に希釈する。

ホメオパシー製品はOTC薬として,またはホメオパシー施術者から入手可能である。

統合・補完・代替医療の概要も参照のこと。)

ホメオパシーの規制

ボタニカルサプリメントや栄養補助食品とは異なり,ホメオパシーの治療薬はFDAによって医薬品として規制されている。ホメオパシーの治療薬はFDAに承認されたものだけを製造できる。希釈後はほとんど有効成分が残らないため,有効成分は希釈前に検査される。

FDAは,ホメオパシーの治療薬について,他の薬剤には存在するいくつかの要件を免除している:

  • それぞれの有効成分およびその濃度を,治療薬の配布前に研究室で確認する必要がない。

  • ホメオパシー製品の製造業者は効力についてのエビデンス提出する必要がない。

  • ホメオパシーの治療薬は含有アルコール(通常の希釈液)量の制限に関して一時的に免除されている。

しかし,表示には以下を記載することが求められている:

  • 製造業者

  • 「ホメオパシー」という用語

  • 少なくとも1つの適応

  • 安全に使用するための指示

  • 特別に免除された場合を除き,有効成分と希釈度

ホメオパシーのエビデンス

ホメオパシーの2つの主な理論は,「似たものが似たものを治す」および希釈により製剤が強力になるというものである。あまりにも希釈しすぎて有効成分がなくなった製剤に(プラセボ効果以外の)生理的効果があることは,生物学的,化学的に受け入れがたい。しかし,ホメオパシー製剤と称されるもののなかには,有効成分が十分に生理学的作用を有する濃度で含まれているものもある(例,測定可能な量の亜鉛を含むZicam)。

様々な疾患に対するホメオパシー治療の効力が広く研究されている。システマティックレビューの2010年の分析では,ホメオパシーにはいかなる適応に対してもプラセボ以上の効力はないことが明らかにされ,英国のHouse of Commons Science and Technology Committee(下院科学技術委員会)もホメオパシーのシステマティックレビューおよびメタアナリシスについての徹底的なレビューの末に同じ結論に至った(2010年)(1, 2)。ホメオパシーの臨床的なエビデンスについてオーストラリア政府が行った徹底的なレビュー(2013年)では,61の適応において,ホメオパシーの効力がないことを示すエビデンスがあり,別の7の適応において,質の高いエビデンスがなかった(3)。その後のレビューも,効力が実証されていないことや質の低いデータに関して同様の結論に至っている(4)。

ホメオパシーの効果は穏やかで,毒性の可能性は低いが,ホメオパシーの研究は続けられている。明らかに有益といえる通常医療の治療法がない一部の臨床状態(線維筋痛症など)では,症状を緩和でき,無害である可能性を示すデータがあれば,ホメオパシーを考慮できるかもしれない(5)。

ホメオパシーの用法

ホメオパシーは欧州およびインドで広く用いられ,その大きな理由は,使用されてきた長い歴史である;結果として,その実践が文化の一部になっている。

ホメオパシーは,アレルギー,鼻炎,呼吸器症状,消化器系の問題,筋骨格痛,回転性めまいなど,様々な疾患を治療するために用いられる。

生じうる有害作用

ホメオパシーは忍容性が高く,リスクはほとんどない;まれにアレルギー反応または毒性反応が認められる。

報告された有害作用の症例についての2012年のレビューでは,1159人の患者が関与する38の報告が同定された(6)。有害作用としては以下のものがあった:

  • おそらく有効成分に起因する,ホメオパシー療法に対する直接の反応

  • 効果的な通常の治療をホメオパシーで代替したことによる間接的な害

通常医療の医師は,ホメオパシーの治療薬が生物学的に不活性であるため有害作用がないと考えるべきでない。また,一部のホメオパシーの治療薬には生理学的作用を有する他の有効成分が含まれている。患者は,摂取している栄養補助食品について言及する際にホメオパシーという語を誤って用いることが多いため,患者がホメオパシーの治療薬を摂取しているかどうか明確でないことがある。また,FDAは植物薬の多くを,特定の製剤過程を経るならば,ホメオパシー用として登録・表示することを許可している。

パール&ピットフォール

  • ホメオパシーの治療薬が生物学的に不活性であると考えてはならない;ホメオパシーの治療薬に含まれる成分は通常は希釈されすぎて害を生じる可能性はないが,ホメオパシーと称される治療薬のなかには生理学的作用を生じうる量の成分が含まれているものもある。

参考文献

  1. 1.Ernst E: Homeopathy: what does the "best" evidence tell us?Med J Aust192(8):458–60, 2010.

  2. 2.United Kingdom's House of Commons Science and Technology Committee: Homeopathy, 2010.Accessed 7/20/2021.

  3. 3.National Health and Medical Research Council: Effectiveness of homeopathy for clinical conditions: evaluation of the evidence.Accessed 7/20/2021.

  4. 4.Mathie RT, Fok YYY, Viksveen P, et al: Systematic review and meta-analysis of randomised, other-than-placebo controlled, trials of non-individualised homeopathic treatment.Homeopathy 108(2):88-101, 2019.doi: 10.1055/s-0038-1677481

  5. 5.Boehm K, Raak C, Cramer H, et al: Homeopathy in the treatment of fibromyalgia—a comprehensive literature-review and meta-analysis.Complement Ther Med 22(4):731-42, 2014.doi: 10.1016/j.ctim.2014.06.005

  6. 6.Posadzki P, Alotaibi A, Ernst E: Adverse effects of homeopathy: a systematic review of published case reports and case series.Int J Clin Pract 66(12):1178–88, 2012.doi: 10.1111/ijcp.12026

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