食事療法

執筆者:Denise Millstine, MD, Mayo Clinic
レビュー/改訂 2021年 10月
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生物学的技法の一種である食事療法は,以下の目的のために特別な食事をとる養生法(例,Gerson療法,マクロビオティック,Pritikin食)である:

  • 特定の疾患(例,がん,心血管疾患)の治療や予防

  • 全般的な健康増進

  • 身体の解毒(例,体内の毒性物質の中和または除去)

一部の食事療法(例,地中海食)は,通常医療や統合医療で広く受け入れられ,推奨されている。健康を増進する方法としてほかにも多くの食事法が提唱されているが,裏付けとなるエビデンスの強さは様々である。それらでは,しばしば互いに類似した推奨がなされている(例,あまり健康によくない脂肪や精製炭水化物を制限する,食物を植物由来のものやホールフードに置き換える)。

間欠的な絶食は,肝臓由来のグルコースの利用から脂肪組織に貯蔵されているケトン体の利用への転換を引き起こす(1)。動物研究では,代謝面に好ましい影響(例,インスリン感受性およびオートファジーの亢進,おそらく寿命の延伸)がみられることが示されている。ヒトを対象とした研究では,健康上の便益に関する頑健なエビデンスは示されていない。

食事療法の効果が現れるには時間がかかり,研究を行うのは本質的に困難である。

統合・補完・代替医療の概要も参照のこと。)

Ornish食

この食事は超低脂肪のベジタリアン食であり,冠動脈疾患の原因となる動脈閉塞の改善を助け,また前立腺癌やその他のがんの予防や進行を遅らせるのを助けることを目的とする。植物由来の食物に重点を置き,脂肪,精製炭水化物,および動物性タンパク質を避ける。症候性冠動脈疾患患者を対象とした集中的な生活習慣プログラムの一環として,Ornish食は効果的であり費用を削減できる。しかしながら,特定の食事制限によってどのような便益がもたらされるかは不明である。より健康によい脂肪(例,オリーブ油)を制限せず,あまり健康によくない脂肪および精製炭水化物を制限する他の食事法でも,同様の効果が得られる可能性がある。

マクロビオティック

この食事は,主に野菜,全粒穀物,果物,およびシリアルで構成される。一部の支持者は,この食事法でがんおよびその他の慢性疾患の予防および治療が可能であると主張しているが,マクロビオティックのがん治療についての効力を支持するエビデンスはない。マクロビオティックは,メタボリックシンドローム,前糖尿病状態,および糖尿病の患者でも検討されているが,効力があるという決定的なエビデンスはない。

疾患の予防や治療において効力が欠如している以外には,この食事法に従うリスクはほとんどない(2)。

パレオダイエット(paleo diet)

この食事は,食物を狩猟採集していた旧石器時代に食べられていたと主張される様々な食物(例,動物,自生植物)で構成される。したがって,この食事には以下のことが伴う:

  • タンパク質の摂取増加

  • 炭水化物の摂取減少(主に非デンプン質の生の果物および野菜の摂取による)

  • 脂肪の適度な摂取または摂取増加(主に一価不飽和脂肪および多価不飽和脂肪酸の摂取による)

旧石器時代に入手できなかったと考えられる食物(例,乳製品,穀物,豆類,加工された油,精製糖,塩,コーヒー)は回避する。支持者はヒトの代謝がそのような食物の多くに対処するように適応していないと主張する。

パレオダイエットは,冠動脈疾患,メタボリックシンドローム,2型糖尿病,および多くの慢性変性疾患を治療したり,それらのリスクを低下させたりすると考えられている(3, 4)。また,パレオダイエットは減量を促進し,運動能力を向上し,睡眠の質を高め,精神機能を改善する可能性もある。しかし,この食事の効力に関するエビデンスは限られている。

リスクには,栄養不足(全粒穀物および乳製品の摂取減少による)などがある。

旧石器時代に何が食べられていたかについての知識は限られているが,一部のエビデンスからは,旧石器時代の食事は現代のパレオダイエットほど制限されていなかったことが示唆されている。

参考文献

  1. 1.de Cabo R, Mattson MP: Effects of intermittent fasting on health, aging, and disease.N Engl J Med.381(26):2541-2551, 2019.doi: 10.1056/NEJMra1905136.Erratum in: N Engl J Med.2020 Jan 16;382(3):298.Erratum in: N Engl J Med.382(10):978, 2020.PMID: 31881139.

  2. 2.Harmon BE, Carter M, Hurley TG, et al: Nutrient composition and anti-inflammatory potential of a prescribed macrobiotic diet.Nutr Cancer.67(6):933-40, 2015.doi: 10.1080/01635581.2015.1055369

  3. 3.Manheimer EW, van Zuuren EJ, Fedorowicz Z, et al: Paleolithic nutrition for metabolic syndrome: systematic review and meta-analysis.Am J Clin Nutr102(4):922-32, 2015.doi: 10.3945/ajcn.115.113613

  4. 4.Whalen KA, Judd S, McCullough ML, et al: Paleolithic and Mediterranean diet pattern scores are inversely associated with all-cause and cause-specific mortality in adults.J Nutr 147(4):612-620, 2017.doi: 10.3945/jn.116.241919 

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