CT

執筆者:Mehmet Kocak, MD, Rush University Medical Center
レビュー/改訂 2021年 4月
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CTでは,ドーナツ型の装置に内蔵されたX線発生源およびX線検出器が,装置を通過する可動式の台に横たわる患者の周囲を回転する。検出器が多いほど迅速に撮影でき解像度の高い画像が得られ,このことは心臓および腹部臓器の撮影には特に重要であるため,通常4~64列またはそれより多くの検出器をもつマルチスライスのスキャナが用いられる。

検出器からのデータは本質的に,患者の全周の複数の角度から撮影された一連のX線画像を表す。画像は直接見るのではなくコンピュータに転送され,コンピュータによってあらゆる望ましい断面における身体のスライスとなる2次元画像(断層図)に素早く再構成される。データを用いて詳細な3次元画像を構成することもできる。

一部のCTでは,台が徐々に動き,1枚(スライス)撮影される毎に停止する。台が撮影中絶えず動き続けるCTもある;患者の体は直線的に移動し,検出器は円状に動くため,一連の画像は患者の周りをらせんを描いて撮影されたように見える―このためヘリカル(スパイラル)CTという用語が付けられている。

断層X線撮影と同じ原理が核医学検査にも適用でき,この場合照射された放射線に対するセンサーが患者の周囲を周り,コンピュータの技術によりセンサーのデータが断層画像に変換される;例えば単一光子放出型CT(SPECT)および陽電子放出断層撮影(PET)などがある。

CTの使用

CTはX線撮影と比べて,様々な軟部組織の密度を区別するのに優れている。CTでははるかに多くの情報が得られるため,大半の頭蓋内,頭頸部,脊柱,胸腔内,および腹腔内の構造の画像検査において,従来のX線撮影より好まれる。病変の3次元画像は,外科医が手術計画を立てるのに役立つ。

CTは,尿路結石の発見および位置の同定に関して最も正確な検査である。

CTは静注造影剤を使用する撮影と単純撮影が可能である。

単純CTは以下の目的で使用される:

  • 脳の急性出血,尿路結石,および肺結節の発見

  • 骨折およびその他の骨異常の描出

静注造影剤は以下の目的で使用される:

  • 軟部組織の腫瘍,感染,炎症,および外傷に対して撮影する画像の質を改善する

  • 肺塞栓症,大動脈瘤,または大動脈解離が疑われる際などに血管系を評価する

腹部の画像検査には,経口造影剤やときに経直腸投与用の造影剤が用いられるほか,下部消化管を拡張させて可視化するためにガスが用いられることもある。消化管での造影剤は,消化管を周囲の構造と区別するのに役立つ。標準的な経口造影剤はバリウム系であるが,腸穿孔が疑われる場合は低浸透圧性のヨード造影剤を用いるべきである。

CTのバリエーション

CTコロノグラフィー(virtual colonoscopy)およびCTエンテログラフィー

CTコロノグラフィーでは,経口造影剤が投与され,柔軟で細いゴム製のカテーテルを介して直腸にエアが送られた後,大腸全体の薄層CTが行われる。CTコロノグラフィーでは,大腸の高分解能の3次元画像が得られ,これは光学的な大腸内視鏡検査の細部および外観をよく再現している。この手技では,5mmの小さな大腸ポリープおよび大腸粘膜病変を描出できる。従来の大腸内視鏡検査の代替法である。CTコロノグラフィーは従来の大腸内視鏡検査と比べて不快感が少なく,意識下鎮静も不要である。従来の下部消化管造影よりも明瞭かつ精細な画像が得られ,軟部組織腫瘤が偶然描出されることもある。CTコロノグラフィーでは大腸全体が可視化される;対照的に,従来の大腸内視鏡検査では患者約10人に1人で右結腸が完全に評価できない。

CTコロノグラフィーの主な短所には以下のものがある:

  • 検査時にポリープを生検できない

  • 放射線曝露

CTエンテログラフィーは似ているが,これは胃および小腸全体の画像を得るものである。大量の低密度経口造影剤(例,0.1%硫酸バリウムを1300~2100mL)を投与し,小腸全体を拡張させる;等張(neutral)または低密度の造影剤を用いると,より放射線不透過性の高い造影剤によって不鮮明になる可能性がある腸管粘膜の詳細の描出に役立つ。

そのため,CTエンテログラフィー特有の長所は以下にある:

CTエンテログラフィーではしばしば静注造影剤を使用する。腹部および骨盤の全体の薄層高分解能CT画像が得られる。この画像が複数の解剖学的断面で再構成され,3次元再構成画像が作られる。

CTエンテログラフィーは,以下のような炎症性腸疾患以外の疾患の検出および評価にも用いることができる:

  • 小腸を閉塞する病変

  • 腫瘍

  • 膿瘍

  • 瘻孔

  • 出血源

CTによる静脈性腎盂造影(CT IVP)またはCT尿路造影

腎,尿管,および膀胱の詳細な画像を得るため,静注造影剤が注射される。静注造影剤は腎臓内で濃縮され,集尿系,尿管,膀胱へ排出される。複数のCT画像が得られ,造影剤の不透過性が最大になる時間帯で尿路の高分解能画像が生成される。

従来の排泄性尿路造影は,大半の施設でCT尿路造影に取って代わられている。

CT血管造影

静注造影剤を急速ボーラス注入した後,造影剤により動脈および静脈が不透過性になるに従って薄層画像が素早く撮影される。高度なコンピュータグラフィックス技術を用いて,周囲の軟部組織の画像が除去され,従来の血管造影に類似した非常に詳細な血管の画像が得られる。

CT血管造影は,従来の血管造影の,より安全でより侵襲性の低い代替法である。

CTの短所

CTは全体で,患者への診断目的の放射線曝露の大半を占める。複数回の撮影が行われると,合計の線量が比較的高くなり,患者が潜在的なリスクに曝される可能性がある(医療放射線のリスクを参照)。再発性尿路結石がある患者または重度外傷を負った患者で,複数回のCTを行う可能性が最も高い。1回の腹部CTの実効線量は胸部X線500回分に等しいため,放射線曝露のリスクと検査の便益の比較を常に考慮する必要がある。

現在の診療では,CTではできる限り低い線量を用いることが要求される。新しいCTスキャナと改定された撮影プロトコルにより,CTでの放射線曝露量は劇的に減少している。また,より新しい研究段階の手法により,特定のCT撮影法や特定の適応を対象として,さらに線量を大幅に低減した検査法が評価されており,一部の例では,そうした線量がX線撮影での線線と同等になる可能性がある。

一部のCTでは,一定のリスクがある静注造影剤が使用される(X線造影剤と造影剤反応を参照)。しかしながら,経口および経直腸投与用の造影剤にも以下のようなリスクがある:

  • 経口または経直腸投与されたバリウムが消化管の内腔から外部に漏出すると,腹腔内で重度の炎症を引き起こす可能性がある。腸穿孔のリスクがある状況では経口のヨード造影剤が使用される。

  • 経口投与するヨード造影剤の誤嚥によって,重度の化学性肺炎が生じる可能性がある。

  • 腸管内に残留したバリウムが硬化して濃縮される可能性があり,腸閉塞を引き起こすことがある。

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