熱傷のデブリドマンおよびドレッシング

執筆者:Matthew J. Streitz, MD, San Antonio Uniformed Services Health Education Consortium
レビュー/改訂 2023年 4月
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熱傷には,典型的にはデブリドマン,ドレッシング,またはその両方が必要である。

デブリドマン(壊死組織の除去)と創傷ドレッシングは,軽微な熱傷において感染のリスクを低減し,不快感を軽減するために行う。

熱傷も参照のこと。)

熱傷のデブリドマンおよびドレッシングの適応

  • 軽微な熱傷創

熱傷のデブリドマンおよびドレッシングの禁忌

絶対的禁忌

  • なし

相対的禁忌

  • 専門の熱傷ユニットへの搬送が必要な創傷またはその他の熱傷関連の損傷(熱傷の治療を参照)

このような場合は,搬送前に行う熱傷ケアを,受入れ先の熱傷センターとともに決定する。

熱傷のデブリドマンおよびドレッシングの合併症

  • 外用抗菌薬に対するアレルギー反応

熱傷のデブリドマンおよびドレッシングで使用する器具

  • 非滅菌手袋

  • 2%クロルヘキシジンなどの消毒液

  • 25Gおよび21G針

  • 10mLシリンジ

  • 1%リドカインなどの注射用局所麻酔薬

  • 滅菌された剪刀,鉗子

  • 非固着性のドレッシング材

  • 入手可能で必要であれば,熱傷専用のドレッシング材(例,3%ビスマストリブロモフェネート[bismuth tribromophenate]を染み込ませたワセリンガーゼ)

  • 吸収性の厚いドレッシング材(10cm × 10cmのガーゼおよびテープ,四肢の熱傷には伸縮性の巻きガーゼなど)

熱傷のデブリドマンおよびドレッシングにおける重要な解剖

  • 手,足,顔面,性器,会陰部,または大関節に及ぶ熱傷や全周性または広範囲にわたる熱傷では,しばしば熱傷センターへの搬送が必要になる。

皮膚損傷の深度:

  • 表層(以前のI度熱傷):表皮のみにとどまっている

  • 部分層(以前のII度熱傷):真皮に達している

  • 全層(以前のIII度熱傷):皮膚全体が破壊されている

部分層および全層熱傷の体表面積に対する割合として熱傷の大きさを推定する([A]9の法則[成人用]および[B]Lund-Browderチャート[小児用]の図を参照)。

熱傷のデブリドマンおよびドレッシングでの体位

  • 患者にとって不快感が少なく,熱傷がよく露出する姿勢をとらせる

熱傷のデブリドマンおよびドレッシングのステップ-バイ-ステップの手順

全ての熱傷の初期治療

  • 外傷プロトコルに従って患者を安定させる。

  • 皮膚またはに及ぶ化学熱傷は水道水で(しばしば長時間にわたり)洗浄する。

  • 受傷後最初の30分間は,常温(20~25℃)または冷たい水道水による洗浄,浸漬,または冷罨法により熱傷の範囲を制限し,疼痛を有意に緩和する。必要に応じて水または生理食塩水に氷片を加えて温度を下げる。ただし,氷または氷水に浸すと疼痛および熱傷深度が増し,凍傷のリスクが高まり,熱傷面が大きい場合には低体温症のリスクも高まるため,熱傷組織を氷または氷水に浸漬するのは避けること。

  • 熱傷に対する処置を行う前に疼痛を治療する。重度の疼痛に対する最善の鎮痛薬は,通常はフェンタニル1μg/kgやモルヒネ0.1mg/kgなどの静注オピオイドであり,用量を漸増しながら投与する。軽微な熱傷には,非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)やアセトアミノフェンも効果的となる場合がある。

  • 全ての衣服と大きな組織片を熱傷部位から取り除く。熱傷部位と遠位部から指輪やピアスなどの装身具を全て取り外す。

  • 常温の水または生理食塩水に浸して湿らせた滅菌ドレッシング材で熱傷を覆う。疼痛緩和を持続させるため,ドレッシング材は冷たく湿った状態に保つべきである。

  • 患者のワクチン接種歴に応じて,破傷風トキソイドを含有するワクチン(例,Td,Tdap)を接種する(ルーチンの創傷管理における破傷風予防の表を参照)。予防接種が完了していない患者には,破傷風免疫グロブリン250単位の筋肉内投与も行うべきである。

状態が安定している重度熱傷の患者は熱傷センターに搬送する。それ以外の患者には,熱傷のケアを完了させる。

熱傷の根治的ケア

  • 清潔な布またはガーゼと石鹸および水またはクロルヘキシジンなどの低刺激性,抗菌性の創傷用消毒液を用いて,熱傷部位を愛護的に洗浄する。

  • 生理食塩水または水で創傷を洗浄する。

  • 破裂していない水疱はそのままにしておくことを勧める医師もいれば,剪刀や鉗子で開くことを勧める医師もいる。いずれにしても,遊離した皮膚や破れた水疱は壊死組織であり,創傷から剥離し,生存能のある表皮との境界付近を剪刀で切り取り,除去すべきである。

  • 熱傷用の滅菌ドレッシング材を貼付し,場合により外用薬を併用する。

熱傷用のドレッシング材にはいくつかの選択肢がある。抗菌薬(例,銀)を染み込ませたドレッシング材もある。大半はガーゼの一種であるが,皮膚の一部の特徴を備えた生合成被覆材(biosynthetic dressings)もあり,これは創傷に付着し,長期間留置できる。抗菌クリームまたは軟膏を塗布した上に貼付するものが一般的であるが,抗菌薬を含有するものはその限りでない。いずれの場合も,ドレッシング材は滅菌済みで,予想される量の滲出液を十分に吸収できるものでなければならない。

  • 表層(I度)熱傷を除く全ての創傷には,バシトラシンやムピロシンなどの抗菌クリームまたは軟膏を直接塗布することを考慮する。スルファジアジン銀は,かつては熱傷の局所治療の中心であったが,その効果は他の外用抗菌薬より優れているわけではなく,一方で創傷治癒を妨げる可能性があるため,もはや推奨されていない。ただし,部分層熱傷ではまだ用いられることがある(1)。

  • 創傷面を被覆する。市販のドレッシング材が数多くあるが,きめの細かいメッシュのガーゼまたは市販の非固着性ガーゼが適切である。

  • 平折のガーゼを創傷に詰め,さらにその上からガーゼで被覆する。手指や足趾の場合は,指趾間部および指趾に個々にガーゼを当て,細長いガーゼ片で別々に被覆する。ドレッシング材全体を吸収力のあるやや弾性の素材で包む。

熱傷のデブリドマンおよびドレッシングのアフターケア

  • 鎮痛薬を処方して自宅で服用させる。

  • 腫脹(治癒の遅れまたは感染を引き起こす恐れがある)を予防するため,患肢を挙上しておくよう患者に指示する。

  • 約24時間後にフォローアップする。初回のフォローアップ診察時には,ドレッシングを除去し,熱傷の深度とさらなるデブリドマンの必要性を再評価した後,再度ドレッシングを行う。

その後のドレッシング交換のタイミングと場所(例,クリニック,自宅)は以下に依存する:

  • 使用するドレッシング材の種類:一定期間そのままにしておくものもあれば,頻回に交換するものもある。

  • 患者と家族の能力:大きな熱傷がある場合,扱いにくいドレッシングや複雑なドレッシングが必要な部位に熱傷がある場合,ならびに患者のセルフケアの技能が限られている場合には,医療従事者によるケアをより頻回に行ったり,交換回数を減らしたりする必要がある場合がある。

  • 創傷から分泌される滲出液の量:熱傷が乾燥しているほど,ドレッシング交換の回数は少なくて済む。

セルフケアとして,患者に古いドレッシング材を愛護的に除去させ,微温湯(水道水)で創傷を洗わせて,最初に使用したものと同様のドレッシング材を貼付させるべきである。

いずれにしても,受傷の5~7日後に創傷を診察すべきである。

熱傷のデブリドマンおよびドレッシングの注意点とよくあるエラー

  • 処置中の鎮痛,ときに鎮静の必要性を過小評価してはならない(特にデブリドマンやドレッシングの交換が複雑な場合)。不十分な鎮痛は徹底的な創傷ケアを妨げる。

熱傷のデブリドマンおよびドレッシングのアドバイスとこつ

  • 顔面および頸部の熱傷に対して:クロルヘキシジンで創部を消毒し,水疱および遊離した皮膚をデブリドマンで除去した後,バシトラシンなどの低刺激性の外用抗菌薬を塗布するが,創部は覆わないでおく。1日2~3回,創傷を洗浄した後,外用薬を再度塗布する。腫脹を最小限に抑えるまたは軽減するため,頭を高くして寝るよう患者に勧める。

  • 静注オピオイドの代替としては,区域麻酔または神経ブロック,吸入亜酸化窒素,ケタミン静注などがある。

  • 小さな熱傷のデブリドマンには,局所麻酔薬の注射で十分な鎮痛が得られる場合がある。

  • 自宅での熱傷ケアとドレッシングの交換には,かなりの疼痛を伴うことがある。経口オピオイド鎮痛薬を十分に処方すべきであり,責任ある鎮痛薬の使用を奨励すべきである。

参考文献

  1. 1.Heyneman A, Hoeksema H, Vandekerckhove D, et al: The role of silver sulphadiazine in the conservative treatment of partial thickness burn wounds: A systematic review.Burns 42(7):1377–1386, 2016.doi:10.1016/j.burns.2016.03.029

より詳細な情報

有用となりうる英語の資料を以下に示す。ただし,本マニュアルはこれらの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。

  1. Pham TN, Cancio CL, Gibran NS: American Burn Association practice guidelines burn shock resuscitation. J Burn Care Res 29(1):257–266, 2008. doi: 10.1097/BCR.0b013e31815f3876

  2. Kagan RJ, Peck MD, Ahrenholz DH, et al: Surgical management of the burn wound and use of skin substitutes: An expert panel white paper. J Burn Care Res 34(2):e60–e79, 2013.doi: 10.1097/BCR.0b013e31827039a6

  3. International Society for Burn Injury (ISBI) Practice Guidelines Committee, Steering Committee, Advisory Committee: ISBI practice guidelines for burn care. Burns 42(5):953–1021, 2016.doi: 10.1016/j.burns.2016.05.013

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