深く刺さった釣り針の抜去

執筆者:Matthew J. Streitz, MD, San Antonio Uniformed Services Health Education Consortium
レビュー/改訂 2023年 4月
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釣り針が皮下または筋膜の層に深く刺さることがある。

深く刺さった釣り針とは,針のカーブ部分またはそれより先の部分まで刺さっている場合を指し,返しのついた先端が皮膚表面と平行であるか,皮膚表面の方を向いていると,直接引き抜くことができない。浅く刺さった釣り針とは抜去の方法が異なる。

深く刺さった釣り針の抜去の適応

  • 皮膚に深く刺さった釣り針

眼球に刺さった釣り針は専門医が対応すべきである。

深く刺さった釣り針の抜去の禁忌

  • なし

深く刺さった釣り針の抜去の合併症

  • 感染症

  • 慢性の肉芽腫形成

深く刺さった釣り針の抜去で使用する器具

  • ポビドンヨードやクロルヘキシジンなどの消毒液

  • 21Gおよび25G針

  • 10mLシリンジ

  • 1%リドカインなどの局所麻酔薬

  • 11番のメス刃

  • 強力な鉗子またはペンチ

  • 強力なワイヤーカッター(例,刃先が斜めに交差したもの)

  • 非滅菌の小さな紙コップまたはプラスチックコップ

  • 非滅菌手袋

深く刺さった釣り針の抜去における重要な解剖

  • まれに,抜去時に考慮に入れなければならない重要な構造(例,神経,血管,腱)の内部または付近に釣り針が刺さってしまうことがある。

深く刺さった釣り針の抜去での体位

  • 十分な照明の下で,患者にとって不快感が少なく,釣り針がよく露出する姿勢をとらせ,硬く平坦な場所に患部を固定する

深く刺さった釣り針の抜去のステップ-バイ-ステップの手順

  • 釣り針の突出している部位も含めて,ポビドンヨードまたはクロルヘキシジン液で処置部位を消毒する。

  • 釣り針の先端の位置を確認する。

  • 先端と皮膚表面との間に神経血管構造や腱がないことを確認する。

  • 先端の上とその周囲に局所麻酔薬を注射する。

  • ペンチまたは鉗子で軸の部分を把持し,返しの部分が麻酔した皮膚の表面から出てくるように進める。

  • 先端部分が飛散するのに備えてコップで覆い,強力なワイヤーカッターで先端部と返しを切断する(1)。

  • 皮膚に残った,返しのなくなった釣り針を引き抜く。

  • 石鹸と水またはクロルヘキシジンなどの低刺激性,抗菌性の創傷用消毒液で患部を清浄化する。創部を包帯などで被覆する。

  • 患者のワクチン接種歴に応じて,破傷風トキソイドを含有するワクチン(例,Td,Tdap)を接種する(ルーチンの創傷管理における破傷風予防の表を参照)。予防接種が完了していない患者には,破傷風免疫グロブリン250単位の筋肉内投与も行うべきである。

深く刺さった釣り針の抜去のアフターケア

  • 創傷を乾燥した清潔な状態に保ち,48時間後にドレッシング材を除去する。

  • 足の創傷では,下肢を挙上し,歩行を1~2日間控えさせる。

  • 疼痛の増強,発赤,腫脹など,感染症を示唆する所見がないか調べる評価のために再受診させる。

  • 易感染性患者でない限り,抗菌薬はルーチンに投与しない。

易感染性患者を除き,抗菌薬のルーチン使用を支持するデータはない。投与する場合は,第1世代セファロスポリン系薬剤またはペニシリナーゼ抵抗性ペニシリンを使用するか,ペニシリン系およびセファロスポリン系薬剤の禁忌がある患者には,クリンダマイシン,トリメトプリム/スルファメトキサゾール,またはテトラサイクリンを使用する。

深く刺さった釣り針の抜去の注意点とよくあるエラー

  • まれに,釣り針が重要な構造の内部やその下に埋没することがあり,その場合,この釣り針を前進させる方法は有意な損傷を引き起こす可能性があるため,直視下での検索を行うべきである。

  • 全ての刺創と同様に,感染の有意なリスクがある。

  • 切断時に釣り針の先端を覆わないと,先端が高速で飛散する可能性があり,負傷のリスクがある。

深く刺さった釣り針の抜去のアドバイスとこつ

  • 釣り針は非常に頑丈な鋼でできており,小さなワイヤーカッターや包帯剪刀では切断できないことが多い。

  • 他の方法が不成功に終わった場合は,釣り針の刺入部付近に楕円形の切開を加えなければならないこともある。

  • 爪の下の組織に刺さった釣り針は,抜去する前に指ブロックを行う。症例によっては,釣り針を露出するために爪の全体または一部を切除する必要がある。

参考文献

1.Ahmad Khan H, Kamal Y, Lone AU: Fish hook injury: Removal by "push through and cut off" technique: A case report and brief literature review.Trauma Mon 19(2):e17728, 2014.doi: 10.5812/traumamon.17728

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