母指副子(thumb spica splint)の装着

執筆者:Miranda Lewis, MD, University of Washington
レビュー/改訂 2021年 7月
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スパイカ型の母指副子(thumb spica splint)は,母指および隣接構造を固定するために装着する器具である。

適応

  • 母指中手骨骨折

  • 舟状骨骨折

  • 月状骨骨折

  • 母指尺側側副靱帯の損傷

  • ドゥケルバン腱鞘炎

禁忌

  • なし

合併症

  • 熱損傷(石膏またはグラスファイバーと水の発熱反応に起因する)

  • 皮膚のびらんおよび/または虚血性損傷を引き起こす過度の圧迫

  • 全周性にきつく巻きすぎると,コンパートメント症候群の一因になる場合がある

器具

  • ストッキネット(1つはMCP関節から前腕中央部までの範囲を覆うもの,2つめは母指を中手骨の先端から基部まで覆うもの)

  • 5cm(2インチ)幅のロールパッド(例,コットンロール)

  • 7.5cm(3インチ)幅の石膏製またはグラスファイバー製の副子材料,母指のDIP関節から前腕中央部までを十分に覆えるもの

  • 強力な剪刀および/または大型のハサミ

  • 5cm(2インチ)幅の弾性包帯

  • 微温湯とバケツまたはその他の容器

  • 非滅菌手袋

体位

  • 術者が患手に適切にアクセスできる体位をとらせるべきである。

  • 細いカップまたはワイングラスの脚を持っているかのように,母指をわずかな屈曲および外転位に保つ。

  • 手関節を10~20°伸展位にする。

  • さらなる損傷がない限り,副子が第2から第4MCP関節の動きを制限しないようにすべきである。

ステップ-バイ-ステップの手順

  • 非滅菌手袋を着用する。

  • 母指を覆うようにストッキネットを装着する。

  • 母指の突出を考慮し,2つめのストッキネットに穴を開ける。

  • MCP関節から前腕中央部までの範囲を覆うように2つめのストッキネットを装着する

  • MCP関節から前腕中央部まで,副子材料で覆われている範囲をわずかに越えるようにパッドを巻く;1周毎にパッドの幅の半分が重なるようにし,一定間隔でパッドを幅方向にちぎって組織圧迫のリスクを減らす

  • 母指にパッドを巻く。

  • 必要に応じてパッドを滑らかにする。パッドに皺がないことを確認する。皮膚に局所的な圧力がかかる部位ができないように,余分なパッドがあれば取り除く。

  • 母指DIP関節をわずかに超える位置から前腕中央部までの距離に合わせた長さに副子材料を広げる。

  • さらに副子材料のロールを広げ,最初の長さに合わせて6~8層(1層のロールを使用する場合)になるまで前後に折りたたんでいく。

  • あるいは,既製の副子材料を使用する場合は,上記の長さに切る。

  • 副子材料を微温湯に浸す。

  • 副子材料を圧して余分な水を絞り出す(石膏を強く絞ってはならない)。

  • 副子材料を母指周囲および前腕の橈側面に当てる。

  • 余分なストッキネットと綿パッドを折り返し,副子材料の縁を全て覆う。

  • 副子材料の上から,1周毎に弾性包帯の半分の幅が重なるように,弾性包帯を遠位から近位へと巻く。

  • 指先ではなく手掌を使って患肢の輪郭に沿うように副子材料を滑らかにし,材料の隙間を埋める。

  • 副子材料が硬化するまで,母指を若干の屈曲および外転位に,手および手関節を細いカップまたはワイングラスの脚を持っているかのような位置に保つ(スパイカ型の母指副子の図を参照)。

  • 遠位部の神経血管の状態(例,毛細血管再充満試験,遠位部の感覚,指の屈曲および伸展)を確認する。

スパイカ型の母指副子

アフターケア

  • 副子を乾燥した状態に保つよう患者に助言する。

  • 適切なフォローアップを手配または推奨する。

  • 疼痛の悪化,錯感覚/しびれ,手指の変色などの合併症がないかよく観察するよう患者に指示する。

  • 経口薬により自宅で疼痛をコントロールできない場合には追加で受診するよう患者に指示する。

注意点とよくあるエラー

  • パッドおよび弾性包帯はきつく巻きすぎないようにする。

  • この副子では,母指基部は余分な石膏の皺ができやすい部位である。

  • 橈骨茎状突起上に追加のパッドが必要になることがある。

アドバイスとこつ

  • 母指部分の長軸方向に沿って(先端からMCP関節まで)副子材料を切ることで,母指周辺の成形を改善できる可能性がある。

  • あるいは,副子の長軸方向に対して垂直に母指基部に小さな切込みを入れ,この部位に石膏の皺ができるのを防ぐこともできる。

  • 温水は石膏の硬化を早めるため,副子の装着に慣れていない場合には,比較的低温の水を使用することで作業可能な時間を延ばすことができる。

  • 体格の大きい患者では,前腕部分の包帯に約7.5cm(3インチ)の綿パッドを使用してもよい。

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