遺伝性クリオピリン関連周期熱症候群(クリオピリン病)

執筆者:Apostolos Kontzias, MD, Stony Brook University School of Medicine
レビュー/改訂 2022年 1月
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遺伝性クリオピリン関連周期熱症候群は常染色体顕性遺伝(優性遺伝)の形式をとり,寒冷により誘発される自己炎症性疾患群である;家族性寒冷自己炎症性症候群,Muckle-Wells症候群,および新生児発症多臓器自己炎症性疾患などが含まれる。診断は臨床的に行う。治療はインターロイキン1β阻害薬による。

遺伝性クリオピリン関連周期熱症候群(CAPS)は進行性に重症化する疾患スペクトラムである。

以下が原因である:

  • 炎症およびインターロイキン1β(IL-1β)プロセシングを媒介するタンパク質であるクリオピリンをコードする遺伝子の突然変異

クリオピリン活性が増強され,それによってNLRP3インフラマソームからのIL-1β放出が増大し,その結果炎症および発熱が生じる。新生児発症多臓器自己炎症性疾患の40%の患者,Muckle-Wells症候群の25%の患者,および家族性寒冷自己炎症性症候群の10%の患者では,標準の遺伝子検査に基づき同定可能な変異が認められないため,遺伝子変異が確認されなくても,CAPSの診断は除外されない。そのような患者の多くが体細胞モザイクを呈し,その表現型を生じる。

家族性寒冷自己炎症性症候群(FCAS)では典型的に,寒冷によって誘発される蕁麻疹様発疹が生じ,発熱およびときに関節痛を伴う。しばしば1歳までに発症する。

Muckle-Wells症候群(MWS)は,間欠熱,蕁麻疹様発疹,関節痛,および進行性難聴を引き起こし,患者の25%に腎アミロイドーシスが発生する。

新生児発症多臓器自己炎症性疾患(NOMID)は,発熱と移動する蕁麻疹様発疹のほか,関節および四肢の変形,顔面変形,慢性無菌性髄膜炎,大脳萎縮,ぶどう膜炎,乳頭浮腫,発達の遅れ,ならびにアミロイドーシスを引き起こす傾向がある。未治療の場合20%もの患者が20歳までに死亡する。

自己炎症性疾患である周期熱

CAPS = クリオピリン関連周期熱症候群; FMF = 家族性地中海熱;NOMID = 新生児期発症多臓器系炎症性疾患;PFAPA = アフタ性口内炎,咽頭炎,およびリンパ節炎を伴う周期熱;TRAPS = 腫瘍壊死因子受容体関連周期性症候群。

Adapted from Sag E, Bilginer Y, Ozen S: Autoinflammatory diseases with periodic fevers.Curr Rheumatol Rep 19(7):41, 2017.doi: 10.1007/s11926-017-0670-8

診断

  • 臨床診断基準

提唱されているCAPSの診断基準は,炎症マーカーの上昇のほか,以下のうち少なくとも2つを含む:

  • 蕁麻疹様発疹

  • 寒冷および/またはストレスにより誘発される発作

  • 感音難聴

  • 筋骨格系の症状(関節痛,関節炎,筋肉痛など)

  • 慢性無菌性髄膜炎

  • 骨格異常(骨端の過成長,前頭部突出など)

この基準の感度は81%,特異度は94%である。(1)

発症年齢が低いとCAPSと診断される可能性が高くなるが,後の発症である場合にもCAPSは考慮されるべきであり,その理由として本疾患がまれであること(ゆえに考慮されないことが多い),表現型が軽度であること(若年期には認識されない可能性がある),および体細胞変異(家族歴がない)であることがあげられる(2)。

診断に関する参考文献

  1. 1.Kuemmerle-Deschner JB, Ozen S, Tyrrell PN, et al: Diagnostic criteria for cryopyrin-associated periodic syndrome (CAPS).Ann Rheum Dis 76(6):942–947, 2017.doi: 10.1136/annrheumdis-2016-209686

  2. 2.Welzel T, Kuemmerle-Deschner JB: Diagnosis and management of the cryopyrin-associated periodic syndromes (CAPS): What do we know today?J Clin Med 10(1):128, 2021.doi: 10.3390/jcm10010128

治療

  • IL-1阻害薬

クリオピリン関連周期性症候群は,アナキンラ(anakinra)(100mg,皮下,1日1回),リロナセプト(rilonacept)(2.2mg/kg,皮下,週1回),またはカナキヌマブ(150mg,皮下,8週毎,または難治例では4週毎 ;1, 2, 3)により治療する。

治療に関する参考文献

  1. 1.Lachmann HJ, Kone-Paut I, Kuemmerle-Deschner JB, et al: Use of canakinumab in the cryopyrin-associated periodic syndrome.N Engl J Med 360(23):2416–2425, 2009.doi: 10.1056/NEJMoa0810787

  2. 2.Sibley CH, Plass N, Snow J, et al: Sustained response and prevention of damage progression in patients with neonatal-onset multisystem inflammatory disease treated with anakinra: A cohort study to determine three- and five-year outcomes.Arthritis Rheum 64(7):2375–2386, 2012.doi: 10.1002/art.34409

  3. 3.Hoffman HM, Throne ML, Amar NJ, et al: Long-term efficacy and safety profile of rilonacept in the treatment of cryopyrin-associated periodic syndromes: Results of a 72-week open-label extension study.Clin Ther 34(10):2091–2103, 2012.doi: 10.1016/j.clinthera.2012.09.009

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