青年期の肥満は,30年前と比較して今や倍増しており,青年クリニック受診の最も多い理由の1つである。肥満のある成人が青年期も肥満であった割合は3分の1以下であるが,肥満のある青年は,ほとんどの場合成人になっても肥満のままである。
多くの治療アプローチがあるにもかかわらず,肥満は最も治療困難な問題の1つであり,長期的な治療成功率は依然として低い。
肥満合併症の大半は成人で発現するが,肥満のある青年は肥満ではない同世代の者に比べ血圧が高い可能性が高い。肥満に関連するインスリン抵抗性により,青年期の2型糖尿病の発生頻度が増加している。社会が肥満を恥ずべきものとしていることから,多くの肥満のある青年の自己評価は低く,ますます運動不足になり社会的に孤立する。
青年期の肥満の病因
青年で肥満に影響する因子は,成人でみられる因子と同じである。大半の症例は外的因子(例,摂取カロリー過剰および/または質の低い食事)によるものであり,しばしば座位時間の長い生活習慣と関連している。遺伝的影響は多くみられ,今では原因遺伝子が同定されている。( see also page 肥満およびメタボリックシンドローム)。
肥満が甲状腺機能低下症 または副腎皮質機能亢進症などの何らかの内分泌疾患の結果ではないかと親が心配することがあるが,そのような疾患が原因であることはまれである。内分泌疾患によって体重が増加した青年は,通常低身長であり,基礎にある疾患の他の徴候がみられる。
青年期の肥満の診断
Body mass index
Body mass index(BMI)の算出は身体評価の重要な側面の1つである。BMI値が年齢別かつ男女別の95パーセンタイル以上である青年が肥満とみなされる。
原発性の内分泌疾患(例,副腎皮質機能亢進症,甲状腺機能低下症)または代謝疾患が原因となることはまれであるが,身長の伸びが著しく遅れている場合は,これらを除外すべきである。低身長で高血圧がある場合は,クッシング症候群を考慮すべきである。
青年期の肥満の治療
行動および生活習慣の是正
12歳以上でBMIが95パーセンタイル以上の青年では,減量薬
BMIが95パーセンタイルの120%以上である13歳以上の青年では,減量・代謝改善手術のための評価
(American Academy of Pediatrics[AAP]のClinical Practice Guideline for the Evaluation and Treatment of Children and Adolescents With Obesity[2023]も参照のこと。)
肥満の全ての小児および青年には,栄養,身体活動,および健康にかかわる行動を対象とした健康および生活習慣の集中的な改善戦略を授けるべきである。
12歳以上で肥満(BMIが年齢別および性別の95パーセンタイル以上)の青年には,減量のための薬剤を投与してもよい(AAPのガイドライン,Use of Pharmacotherapy[2023]を参照)。
重度の肥満(BMIが年齢および性別の95パーセンタイルの120%以上)のある13歳以上の青年は,減量・代謝改善手術の評価のために紹介してもよい(AAPのガイドラインPediatric Metabolic and Bariatric Surgery[2023]を参照)。
より詳細な情報
有用となりうる英語の資料を以下に示す。ただし,本マニュアルはこの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。
Academy of Pediatrics: Clinical Practice Guideline for the Evaluation and Treatment of Children and Adolescents With Obesity (2023)