陰茎および尿道形成異常

執筆者:Ronald Rabinowitz, MD, University of Rochester Medical Center;
Jimena Cubillos, MD, University of Rochester School of Medicine and Dentistry
レビュー/改訂 2022年 8月
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尿道の先天異常は,男児では通常陰茎の解剖学的異常を伴い,その逆も真である。女児においては,尿道の先天性形成異常は他の外性器異常を伴わない場合が多い。機能障害がある場合や美容的矯正が希望される場合は,外科的修復が必要となる。

陰茎形成異常

尿道索

この形成異常は陰茎が腹側,外側,および/または回転して弯曲した状態であり,それは勃起時に最も明らかとなる;尿道海綿体の通常の走行に沿う線維組織,または2つの陰茎海綿体の間の大きさの相違が原因である。尿道索はしばしば尿道下裂を伴う。重度の変形には外科的修復が必要となりうる。

尿道上裂

尿道が亀頭もしくは陰茎幹部の背面または陰茎恥骨移行部に開口している状態である。女児では,陰核と陰唇の間または腹部に尿道が開口する。尿道上裂には部分的なもの(15%)と完全なものがあり,最重症の病型では膀胱外反を併発する。尿道上裂の症状と徴候は,失禁尿逆流,および尿路感染症(UTI)である。

尿道上裂の治療は手術による。部分的な尿道上裂では,治療後の失禁に関する予後は良好である。完全な尿道上裂では,陰茎の外科的再建だけでは失禁が残存する場合があるため,完全な排尿コントロールを実現するには膀胱出口部の再建が必要となる。

尿道上裂(男性)
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この写真では,尿道が陰茎背側で開口している。
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尿道下裂

この形成異常は,尿道溝の管形成および癒合が不完全な場合に発生する。ほぼ全例が男児であり,尿道が陰茎幹部下面の陰茎陰嚢移行部,陰嚢襞の間または会陰部に開口する。包皮は円周状に発育することができず,背側にフードを覆ったような外観を呈する。尿道下裂はしばしば尿道索を合併する。

機能的および美容的矯正の予後は良好である。生後6カ月頃に行う外来手術では,陰茎幹部の皮膚または包皮を用いた新生尿道の形成と尿道索の修復が行われる。

女児の尿道下裂は極めてまれであるが,その場合,尿道は腟口内に開口する。

尿道下裂の病型
遠位型尿道下裂
遠位型尿道下裂

この画像では,矢印は尿道口を示している。

Image courtesy of Drs. Ronald Rabinowitz

近位型尿道下裂
近位型尿道下裂

この画像では,矢印は尿道口を示している。

Image courtesy of Drs. Ronald Rabinowitz

陰嚢型尿道下裂
陰嚢型尿道下裂

Images courtesy of Drs. Ronald Rabinowitz and Jimena Cubillos.

包茎および嵌頓包茎

包茎とは,包皮が収縮のため亀頭を越えて後退できなくなっている状態のことであり,陰茎の異常としては最も頻度が高く,先天性のことも後天性のこともある。

嵌頓包茎とは,後退した収縮包皮が亀頭より遠位側に戻らなくなった状態のことである。

包茎にはコルチコステロイドの外用と愛護的な伸張が有効となりうるが,一部の患児には環状切除術が必要となる。

嵌頓包茎については,収縮した包皮が駆血帯のように作用して浮腫および疼痛が生じるため,緊急に還納すべきである。指で浮腫状の包皮を全周性にきつく圧迫すれば浮腫を十分に軽減でき,両方の母指で亀頭を締まった包皮の間を通して押し戻すことで,包皮を正常な位置に戻すことができる。この手技が無効の場合は,局所麻酔を用いた背面切開により,病態は一時的に軽減する。浮腫が消失したら,環状切除術または外用コルチコステロイドで包茎を治療してもよい。

その他の陰茎形成異常

包皮小帯が非常に緊張している場合,包皮を完全に後退させることができないことがあり,包皮の後退や勃起の際に疼痛または出血が生じる。患者が環状切除術を希望しない場合は,小帯切除術で十分に症状を解消できる可能性がある。

比較的頻度の低い形成異常としては,陰茎の無形成,重複,リンパ浮腫などがある。多くは尿道の異常や,膀胱外反などの他の形成異常を伴う。大半の形成異常の治療は手術による。

小陰茎はアンドロゲンの欠乏または感受性低下が原因で起こり,欠乏症のある男児では,治療はテストステロンの補充となる。

尿道形成異常

外尿道口狭窄

外尿道口狭窄は,男児の新生児に対する環状切除後に発生する場合が最も多いが,ときに先天性で尿道下裂に合併して発生することもある。尿線の著明な歪みや狭小化がみられる場合は,尿道口切開術が必要である。

尿道狭窄

尿道狭窄は尿道の一部分で閉塞を引き起こす。ほぼ全例が男児であり,通常は後天性で,典型例では騎乗型損傷での挫滅損傷が原因である。 尿道狭窄は医原性のこともあり,手術後(最も一般的には尿道下裂の修復術後)または外傷をもたらすようなカテーテル留置後に発生する。先天性尿道狭窄は尿道弁と同様の症状を呈し,出生前超音波検査か,出生後の開口部閉塞または尿膜管開存の症状および徴候によって診断され,逆行性尿道造影によって確定される。初期治療としては,しばしば内視鏡的尿道切開術が施行されるが,観血的尿道形成術が必要になる場合もある。

重複尿道および三重尿道は尿道の形成異常である。開通している尿道は最も腹側にあるものである。排尿時膀胱尿道造影(VCUG)を施行し,開通性を判断するとともに,複数の尿道と膀胱との連絡を検出すべきである。外科的介入がほぼ常に必要である。

尿道弁

男児では,後部尿道にある襞が弁として作用し,尿の流れを妨害することがある。尿道弁に続発する泌尿器系の異常として,排尿遅延,尿勢低下,尿路感染症,溢流性尿失禁,筋原性の膀胱機能障害,膀胱尿管逆流症,上部尿路の損傷,腎機能不全などがある。尿道弁にはときに尿膜管開存が併発する。胎児の尿排泄は羊水に寄与するため,重度の尿道閉塞は羊水の減少(羊水過少)につながり,そのため肺低形成が生じ,それに続いて肺高血圧,さらなる肺低形成,および/または呼吸不全を来す可能性がある。その後は肺高血圧から全身の高血圧が起こりうる。重症例は周産期死亡に至る可能性もある。

しばしば,重度の両側性水尿管水腎症または羊水過少など,ルーチンの出生前超音波検査での所見により診断される。出生後に本症が疑われた症例(尿流の異常による場合が多い)では,直ちに排尿時膀胱尿道造影を施行して診断を確定する。

進行性の腎変性を阻止するため,診断時に手術(通常内視鏡による)が行われる。 弁を内視鏡的に焼灼できない場合には,一時的な膀胱瘻造設の適応となる。

はるかに頻度の低い形成異常として前部尿道憩室があるが,これも弁(前部尿道弁)としての作用がある。この形成異常は,内視鏡的に治療されることが多く,ときに開放手術による再建も行われる。

後部尿道弁
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この排尿時膀胱尿道造影(VCUG)像には,後部尿道弁による遠位の閉塞を伴う後部尿道の拡張が写っている。
Image courtesy of Drs. Ronald Rabinowitz

尿道脱

尿道脱は,遠位尿道のごく一部が外尿道口から脱出した状態である。脱出は主に女児に生じ,黒人で最も多くみられる。乳児期または小児期後期に生じる場合もあり,通常は陰唇間腫瘤(interlabial mass)として顕在化する。尿道脱が生じると,尿道の開口部がドーナツ状になり,その中心に尿道口がみられる。刺激感と疼痛および/または出血が生じることがある。治療は,通常,エストロゲンクリームの外用による保存的な治療である。外科的介入が必要になることはまれである。

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