孔脳症とは,出生前または出生後に大脳半球内に空洞が形成される病態である。
空洞はしばしば脳室と交通しているが,閉鎖して(すなわち非交通性)液体が充満していることもある。孔脳症(特に非交通性)では頭蓋内圧亢進と進行性水頭症を併発することがあるが,まれである。
孔脳症の原因としては以下のものがある:
遺伝性の異常
炎症性疾患
局所の脳血流が障害される疾患(例,実質に波及した脳室内出血)
神経学的診察では通常異常がみられ,臨床像としては筋緊張の低下または亢進,発達遅滞,不全片麻痺,視覚的注意の障害などがある。しかしながら,軽微な神経徴候を示すのみで,知能は正常な患者も少数ながら存在する。
孔脳症の診断は頭部CT,MRI,または超音波検査によって確定される。
孔脳症の治療は支持療法による。
予後は多様である。
水無脳症
水無脳症は,両側大脳半球がほぼ完全に欠損する,極端な形態の孔脳症である。通常,小脳と脳幹は正常で,基底核も完全な状態を保っている。頭蓋円蓋を覆う髄膜,骨,および皮膚も正常である。
水無脳症では通常,妊娠12週以降に発育中の大脳半球への血流が大幅に途絶することにより嚢胞が形成される。子宮内で生じる両側性の太い血管の梗塞により血液供給が遮断される。この場合,出生した患児の頭蓋骨に欠損はなく,外見上は正常に見えることがある。吸啜や把握反射など正常な乳児反射運動がみられる場合もあるが,それ以上の発達はみられない。
神経学的診察では通常異常がみられ,小児期にはしばしば痙攣発作と著明な知的障害がみられる。真の水無脳症では,呼吸など生命維持に必要な機能を維持し,疼痛刺激に反応できるのがやっとであり,他者と意思疎通したり個人的ニーズに対処したりする能力は著しく制限されている。頭部は正常に見えることもあるが,透光試験を行うと,光が完全に透過する。
水無脳症は,しばしば出生前超音波検査で診断される。確定診断はCTまたは超音波による。
水無脳症の治療は支持療法であり,頭部の発育が過剰な場合はシャント術を施行する。
裂脳症
裂脳症は,専門家によっては孔脳症の1病型として分類されるが,大脳半球に異常な細隙または裂溝が存在する。それらの裂溝は大脳皮質表面から脳室へ拡がっており,他の孔脳症とは異なり,異所性の灰白質で裏打ちされている。この灰白質は通常,多小脳回症と一致する,すなわち襞の小型化と異常な層構造が認められ,異常に形成された脳回のように見える。対向する裂溝壁同士が密着しているせいでMRI画像上で脳室からくも膜下腔に向かう髄液流路が明瞭に描出されない場合は,closed-lip型裂脳症と呼ばれる。髄液流路が認められる場合は,open-lip型裂脳症と呼ばれる。Open-lip型裂脳症は水頭症につながる可能性がある。
裂脳症は,ニューロンおよび神経膠前駆細胞の広範な喪失を引き起こす有意な局所損傷(虚血など)によって,あるいは妊娠2~5カ月の期間中に生じる遺伝因子によって引き起こされる可能性がある。
しばしば乳児期から発達遅滞がみられるほか,障害部位に応じて,不全片麻痺による筋力低下や痙性などの局所的な神経所見を認めることがある。どちらの病型の裂脳症でも痙攣発作がよくみられる。
裂脳症の治療は支持療法による。