反抗挑発症

執筆者:Josephine Elia, MD, Sidney Kimmel Medical College of Thomas Jefferson University
レビュー/改訂 2023年 5月
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反抗挑発症(oppositional defiant disorder)は,権威者に対して否定的,反抗的,または敵意的な行動を反復的または持続的に起こそうとする状態である。診断は臨床基準による。治療は,個人精神療法と家族または養育者に対する治療法による。ときに,易怒性を抑えるために薬剤も使用される。

反抗挑発症の有病率は,診断基準が非常に主観的であるため推定値に大きなばらつきがあるが,小児および青年の15%にも上ると考えられる。思春期前では男児の患者数が女児のそれを大きく上回るが,思春期以降ではその差は小さくなる。

ときに反抗挑発症は軽症の素行症のように認識されているが,これら2つの疾患は表面的な類似点があるに過ぎない。反抗挑発症の特徴は,易怒性および反抗性を特徴とする対人関係の様式である。しかしながら,素行症の患児は良心に欠けているように見え,繰り返し他者の権利を侵害し(例,いじめ,脅迫,有害行為,動物虐待),ときに易怒性の徴候はみられない。

反抗挑発症の病因は不明であるが,大人たちによって騒々しい論争を伴う対人衝突が生じている家庭の小児に最も多く発生していると考えられる。この診断は,限局的な疾患としてではなく,さらなる調査および治療を要する基礎的な問題を示唆するものとして捉えるべきである。

反抗挑発症の症状と徴候

典型的には,反抗挑発症の患児にはしばしば以下の傾向がみられる:

  • 繰り返し,かつ容易にかんしゃくを起こす

  • 大人と口論になる

  • 大人に反抗する

  • 規則に従うことを拒否する

  • 故意に人の気に障ることをする

  • 自分のミスや不正行為を他人のせいにする

  • 容易に不快になるまたは腹を立てる

  • 悪意に満ち意地が悪い

多くの患児はまた社会的技能に欠ける。

反抗挑発症の診断

  • 精神医学的評価

  • Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fifth edition(DSM-5-TR)の診断基準

反抗挑発症は,小児にこれらの症状のうちの4つ以上が最低6カ月にわたり認められる場合に診断される。症状は重度で秩序を破壊するものでなければならない。

反抗挑発症は類似した症状を引き起こす以下の病態と鑑別する必要がある:

  • 軽度から中等度の反抗行動:このような行動は,ほぼ全ての小児および青年において周期的に認められる。

  • 無治療の注意欠如多動症(ADHD):ADHDを十分に治療すれば,反抗挑発症に似た症状も消失する場合が多い。

  • 気分症:うつ病による易怒性は,快感消失および自律神経症状(例,睡眠および食欲の障害)の存在によって反抗挑発症と鑑別できるが,これらの症状は小児では容易に見逃される。

  • 不安症および強迫症:これらの疾患では,患児が不安に圧倒されたり,自分の儀式的行動の遂行を妨げられたりすると,反抗行動が生じる。

反抗挑発症の治療

  • 行動変容療法

  • ときに薬剤

基礎にある問題(例,家族機能不全)および併存症(例,ADHD)を同定して是正すべきである。しかしながら,たとえ対処や治療を行わない場合でも,反抗挑発症の小児の大半が時間の経過とともに徐々に改善していく。

まずは,患児の行動をより社会的に適切なものにするために設計された報酬に基づく行動変容プログラムが反抗挑発症に対する第1選択の治療法となる。多くの小児で社会的技能を確立する集団療法が有益となりうる。

ときに,抑うつ症または不安症の治療に使用される薬剤(うつ病,不安症,および関連症群の長期治療に使用される薬剤の表を参照)が有益となることがある。

要点

  • 反抗挑発症では,患児はしばしばかんしゃくを起こし,大人に反抗し,ルールを無視し,故意に他人の気に障ることをするのが典型的である。

  • まずは,報酬に基づく行動変容プログラムを使用し,患児の行動を社会的により適切なものにする;抑うつ症や不安症の治療に使用される薬剤が役立つ可能性がある。

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