自然流産

(流産;妊娠喪失)

執筆者:Antonette T. Dulay, MD, Main Line Health System
レビュー/改訂 2022年 10月
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自然流産とは,妊娠20週未満での妊娠の喪失である。切迫流産とは,生存可能な胎児の子宮内妊娠が確認されている女性において20週未満で頸管開大を伴わない性器出血がみられる状態である。診断は内診,ヒト絨毛性ゴナドトロピンβサブユニットの測定および超音波検査による。治療は通常,切迫流産に対しては待機的観察であり,自然流産が生じた,または不可避と思われる場合は,観察または子宮内容除去術を行う。

自然流産は,その定義として,胎児が死亡することである。妊娠が確認された女性の約20~30%で,妊娠の初めの20週の間に出血が起こる;このような女性の半分は自然に流産する。したがって,自然流産の発生頻度は確認された妊娠のうち最大約20%である。非常に早期の流産には月経の遅延と誤解されているものもあるため,全妊娠における発生頻度はおそらくさらに高い。

胎児死亡および早産は以下のように分類される:

  • 自然流産:妊娠20週未満での胎児死亡,ときに受胎産物(胎児および胎盤)の排出を伴う

  • 胎児死亡(死産):20週以降の胎児死亡

  • 早産:20~36週6日の生存胎児の娩出

流産は以下のように分類できる(流産の分類の表を参照):

  • 早期か後期か

  • 自然なものか人工的なものか

  • 切迫か進行か

  • 不全か完全か

  • 稽留

  • 反復性か(不育症とも呼ばれる)

  • 敗血症性

表&コラム
表&コラム

確認された妊娠の約10~15%が自然流産となる(1)。全妊娠のうち25%もの妊娠が妊娠の最初の12週間で自然流産に終わる。非常に早期の流産には月経の遅延と誤解されているものもあるため,全妊娠における発生頻度はおそらくさらに高い。

参考文献

  1. 1.Magnus MC, Wilcox AJ, Morken NH, et al: Role of maternal age and pregnancy history in risk of miscarriage: Prospective register based study.BMJ 364:l869, 2019.doi: 10.1136/bmj.l869

自然流産の病因

早期自然流産は染色体異常が原因であることが多い。母体の生殖器異常(例,双角子宮,筋腫,癒着)も妊娠20週までの流産の原因となりうる。単発性の自然流産は,特定のウイルス(特にサイトメガロウイルス,ヘルペスウイルス,パルボウイルス,および風疹ウイルス)に起因する可能性がある。その他の原因としては,免疫学的異常や重度外傷などがある。ほとんどの場合,原因は不明である。

自然流産の危険因子としては以下のものがある:

無症候性の甲状腺疾患,後傾子宮,および軽度の外傷が自然流産を引き起こすことは証明されていない。

自然流産の症状と徴候

自然流産の症状として,痙攣性の骨盤痛,子宮出血,および最終的な組織の排出がある。後期自然流産は,破水した際の羊水の流出から始まることがある。出血が大量になることはまれである。子宮頸管の開大は進行流産であることを示す。

自然流産の後に受胎産物が子宮内に残っていれば,ときに数時間から数日遅れて子宮出血が起こりうる。感染症が発生することもあり,発熱および疼痛のほか,ときに敗血症が生じる(敗血症性流産と呼ばれる)。

自然流産の診断

  • 通常,超音波検査およびヒト絨毛性ゴナドトロピンβサブユニット(β-hCG)の定量

  • 内診

妊娠は尿または血液のβ-hCG検査により診断する。超音波検査を行って,子宮内妊娠を確定し,胎児の心拍(通常は妊娠5.5~6週から検出可能になる)を調べる。しかしながら,在胎期間はいくぶん不確実なことが多く,超音波検査の反復が必要になることがある。以前の検査で検出されていた心拍が認められない場合は,胎児死亡と診断する。あるいは,β-hCGの測定値が連続3回低下した場合には,流産と一致する。

流産の進行状況を判定するために以下のような評価も行う:

  • 切迫流産:子宮出血がみられ,その時期が早すぎるため,胎児が生存しているか,生存を維持できる状態か,頸管が閉じているかを評価することができない。可能性として,合併症を起こすことなく妊娠が継続することもある。

  • 進行流産:子宮頸管が開大している。子宮頸管が開大している場合は,出血量がときに有意となるため,出血量を評価すべきである。

  • 不全流産:受胎産物が部分的に排出される。

  • 完全流産: 受胎産物が排出され,子宮口が閉じている(自然流産における特徴的な症状と徴候の表を参照)。

表&コラム
表&コラム

稽留流産は,子宮が進行的に増大しない場合,またはβ-hCG定量値が妊娠期間に対して低値であるか,あるいは48~72時間以内に2倍とならない場合に疑われる。超音波検査で以下のいずれかを示す場合は稽留流産が確定する:

  • 以前に検出された胎児心拍の消失

  • 胎児の頭殿長が7mmを超える時期に心拍がみられない

  • 胎嚢の平均径(3つの直行面で測定した平均)が25mmを超える時期に胎芽がみられない(経腟超音波検査で判断する)。

anembryonic pregnancyとは,胎児生存の無いな妊娠において,超音波検査で卵黄嚢も胚も認められない胎嚢を指す。

不育症では流産の原因を特定するための検査が必要である。

自然流産の治療

  • 切迫流産では,経過観察

  • 進行,不全,または稽留流産では,経過観察または外科的手技もしくは薬剤による子宮内容除去

  • 母親がRh陰性の場合,Rho(D)免疫グロブリン

  • ときに鎮痛薬

  • 心理的支援

切迫流産に対する治療は経過観察であるが,医療従事者は定期的に女性の症状を評価するか,超音波検査を行うことがある。床上安静によりその後の完全流産のリスクが減少するとのエビデンスはない。

進行,不全,稽留流産に対する治療は,子宮内容除去術を施行するか,受胎産物の自然排出を待つことである。待機的に管理されている患者では,過度の出血もしくは感染が生じた場合,または受胎産物が約2~4週間経っても排出されない場合には,内容除去を行う。

12週未満では,吸引掻爬または薬剤投与により子宮内容除去を行ってもよい。薬剤による子宮内容除去では,ミソプロストール(800μg,腟内)を投与するが,初回投与に反応しない場合は,初回投与から最低3時間は空けて,典型的には7日以内に1回だけ追加投与してもよい(1)。可能であれば,ミソプロストール投与の24時間前にミフェプリストン(200μg,経口)の投与を考慮すべきである。

子宮内容除去術は典型的に,12~23週では頸管拡張・内容除去により,あるいは16~23週以降では薬物による誘導(例,ミソプロストールまたはミフェプリストンによる)により行う。頸管拡張・内容除去については,在胎期間が長いほど,胎盤出血,胎児長管骨による子宮穿孔が発生する可能性,および子宮頸管の拡張が困難となる可能性が高くなる。これらの合併症は,術前の浸透性頸管拡張器(例,ラミナリア桿)使用または薬剤による誘導により減少する。

完全流産と考えられる場合は,子宮内容除去術はルーチンに行わない。子宮内容除去術は,出血が起きている場合と,他の徴候から受胎産物の残存が示唆される場合に施行する。

必要に応じて鎮痛薬を投与すべきである。母親がRh陰性である場合には,Rho(D)免疫グロブリンを投与する。

自然流産の後,親は悲しみや罪悪感を抱くことがある。心理的支援を提供して,自然流産の大半の症例では自身の行動が原因ではない,と安心させるべきである。適切であれば,正式なカウンセリングまたは支援団体を利用できるようにしてもよい。

治療に関する参考文献

  1. 1.American College of Obstetricians and Gynecologists (ACOG): ACOG Practice Bulletin No. 200: Early pregnancy loss.Obstet Gynecol 132(5):e197–e207, 2018.

要点

  • 自然流産は妊娠20週より前の妊娠の喪失であり,おそらく妊娠の最大20%に起きている。

  • 自然流産は染色体異常または母体の生殖器異常(例,双角子宮,筋腫)が原因であることが多いが,個々の症例における病因は通常確定されない。

  • β-hCG定量,超音波検査,および内診により自然流産を確認し,妊娠の状態を判定する;子宮頸管の開大は進行流産であることを意味する。

  • 待機的管理(受胎産物の排出の経過観察)または外科的もしくは薬物(ミソプロストールまたはときにミフェプリストン)による子宮内容除去により治療する。

  • 切迫および完全流産では,子宮内容除去術が必要とならない場合も多い。

  • 両親に心理的支援を提供する。

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