敗血症性流産は,自然流産または人工妊娠中絶の直前,進行中,直後における重篤な子宮感染症である。
敗血症性流産は通常,人工妊娠中絶または自然流産後の,無菌的でない手技を用いた子宮内容除去に起因する。敗血症性流産は,未熟な医療従事者(または妊婦自身)によって十分な手術器具や滅菌処理なしで行われる人工妊娠中絶後にはるかに多くみられ,通常は専門的な医療を受けるための法的障壁,医療へのアクセス障壁,または個人的障壁があることが理由である。
典型的な原因菌として,大腸菌(Escherichia coli),Enterobacter aerogenes,Proteus vulgaris,溶血性レンサ球菌,ブドウ球菌,一部の嫌気性菌(例,ウェルシュ菌[Clostridium perfringens])などがある。1種類以上の細菌が関与することがある。
敗血症性流産の症状と徴候
敗血症性流産の診断
バイタルサインおよび内診ならびに腹部診察
抗菌薬療法の指針となる血液培養
患者の状態を評価するための血算およびその他の検査
超音波検査
敗血症性流産は通常,典型的には妊娠中または妊娠後間もない女性にみられる重症感染症の症状および徴候から,臨床的に明らかである。考えられる原因として受胎産物の遺残がないか調べるため,超音波検査を施行すべきである。女性に原因不明の重度の腹痛および腹膜炎を認める場合には子宮穿孔を疑うべきである。超音波検査は穿孔を発見するには感度が低い。
敗血症性流産が疑われる場合は,抗菌薬療法に役立てるために血液の好気培養および嫌気培養を行う。臨床検査には血算と白血球分画,肝機能検査,電解質の値,グルコース,血中尿素窒素(BUN),およびクレアチニンを含めるべきである。肝機能検査値が異常の場合または女性に多量の出血を認める場合は,プロトロンビン時間(PT)および,部分トロンボプラスチン時間(PTT)を調べる。
敗血症性流産の治療
強力な広域抗菌薬の経験的投与(例,クリンダマイシン + ゲンタマイシン ± アンピシリン)
子宮内容除去術
敗血症性流産の治療は強力な広域抗菌薬療法と可及的速やかな子宮内容除去術である。典型的な経験的抗菌薬療法のレジメンは,クリンダマイシン900mg,静注,8時間毎 + ゲンタマイシン5mg/kg,静注,1日1回 ± アンピシリン2g,静注,4時間毎である。あるいは,アンピシリン,ゲンタマイシン,およびメトロニダゾール500mg,静注,8時間毎の組合せを用いることもできる。培養結果に基づいて抗菌薬のレジメンを変更することがある。
要点
敗血症性流産は通常,人工妊娠中絶または自然流産後の,無菌的でない手技を用いた子宮内容除去に起因する;未熟な医療従事者の無菌的でない手技による人工妊娠中絶処置の後に起こることがはるかに多い。
症状および徴候(例,悪寒,発熱,腟分泌物,腹膜炎,性器出血)は,典型的には流産後24~48時間以内に出現する。
敗血症性流産が疑われる場合は血液培養を行い,抗菌薬療法の指針とする。
広域抗菌薬に加え早急に子宮内容除去術を行い治療する。