異形吸虫症は,腸管寄生吸虫である異形吸虫(Heterophyes heterophyes)による感染症であり,淡水または汽水に生息する感染魚を生または加熱調理不十分な状態で摂取することで感染する。
吸虫は種によって様々な部位(例,血管,消化管,肺,肝臓)に寄生する扁形動物である。
異形吸虫(Heterophyes heterophyes)は東アジア,中東,スーダン,エジプト,および欧州南東部で流行している。
異形吸虫症は,メタセルカリア(被嚢期)を含む淡水または汽水に生息する感染魚を生または加熱調理不十分な状態で摂食することにより獲得される。摂取されたメタセルカリアは脱嚢し,小腸の粘膜に付着する。そこで,メタセルカリアは成虫に発育し,体長約1.0~1.7mm,体幅0.3~0.4mmになる。吸虫は粘膜から体内に侵入して産卵し,その虫卵がリンパ管を通過して血流中に移行することがある。心臓や他の臓器への虫卵の移行が報告されている。
生または加熱調理不十分な淡水魚または汽水魚の摂食後に発生した,近縁吸虫である横川吸虫(Metagonimus yokogawai)の感染症が,極東ロシア,朝鮮半島,日本,中国,台湾,バルカン諸国,イスラエル,およびスペインで報告されている。生または加熱調理不十分なサケの摂取後に発生した,Nanophyetus salmincolaへの腸管感染症が報告されている。
Image from the Centers for Disease Control and Prevention Image Library.
感染はしばしば無症候性となる。多数寄生や易感染性患者では症状がみられる割合が高くなる。発症は典型的には汚染された魚の摂取から約9日後であり,食欲不振,悪心,腹痛,吸収不良,体重減少,ディスペプシア,下痢などが起こりうる。好酸球増多がみられることもある。
吸虫の成虫は腹痛および下痢の原因となりうる。
異形吸虫症の診断は,便中で虫卵(黄褐色で大きさは約30μm×15μm)を検出することによる。異形吸虫(H. heterophyes)の虫卵は,横川吸虫(M. yokogawai)の虫卵と区別できず,Clonorchis属やOpisthorchisの虫卵とも似ている。
異形吸虫(H. heterophyes)および横川吸虫(M. yokogawai)に対する治療はプラジカンテル25mg/kg,経口,1日3回,1日間により,N. salmincolaに対する治療はプラジカンテル20mg/kg,経口,1日3回,1日間の投与による。
予防としては,これらの腸管寄生吸虫を含んでいる可能性がある魚を生または加熱調理不十分な状態で摂取しないようにする。