エムポックス(サル痘)

(MPX)

執筆者:Brenda L. Tesini, MD, University of Rochester School of Medicine and Dentistry
レビュー/改訂 2023年 4月
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エムポックス(サル痘)は,天然痘ウイルスと構造的に近縁のオルソポックスウイルス(orthopoxvirus)であるサル痘ウイルスによって引き起こされる。患者は水疱性または膿疱性発疹で受診し,発疹は痛みを伴うことがあり,しばしば発熱,倦怠感,およびリンパ節腫脹を伴う。診断はPCR検査による。治療は一般に対症療法であり,抗ウイルス薬を使用することもある。予防はワクチン接種による。

サル痘ウイルスは,天然痘ウイルスと同じく,オルソポックスウイルス属に属する。西アフリカ型とコンゴ盆地型という,2つの系統群(clade)(共通の祖先に由来する類似した微生物群)が存在する。その名称に反して,非ヒト霊長類はサル痘ウイルスの保有宿主ではない。病原体保有生物は不明であるが,最も可能性が高い候補はアフリカ,なかでも特に西アフリカと中央アフリカの熱帯雨林地帯に生息する小型齧歯類(例,リス)である。サル痘ウイルスによって引き起こされる疾患は,当初は「サル痘」とも呼ばれていたが,2022年11月に世界保健機関(World Health Organization:WHO)が,このウイルスが引き起こす疾患の名称として「エムポックス(mpox)」という用語を導入した(WHO recommends new name for monkeypox diseaseを参照)。

歴史的には,ヒト疾患の発生は主に散発例に限られ,ときに局地的流行が主にアフリカで起きる程度であった。これまでに最も症例報告が多いのは,コンゴ民主共和国である。2016年以降,確定症例がシエラレオネ,リベリア,中央アフリカ共和国,コンゴ共和国,およびナイジェリアでも報告されている。2000年以降にアフリカでみられた劇的な発生率の上昇は,1980年に天然痘ワクチンの接種が中止されたことによるものと考えられ,天然痘ワクチンの接種を受けた個人では,たとえ接種時期が25年以上前でも,エムポックスのリスクは低下している。このウイルスを保有する動物の生息地を人間がますます侵害していることから,アフリカでのエムポックスの症例数も増加している。

2021年までは,アフリカ以外で発生した症例はアフリカ西部および中央部への旅行や同地域から輸入された動物に直接関連するものであった。2003年に米国で著しいエムポックスのアウトブレイクが発生したが,これは感染した齧歯類がアフリカからペットとして輸入され,そこからペットのプレーリードッグにウイルスが伝播し,その後アメリカ中西部の人々に感染が広まったことによる。このアウトブレイクは6つの州に及び,37例の確定症例と10例の推定症例が報告されたが,死亡例はなかった(1)。

2022年5月以降,本疾患が風土病となっていない約70の国において,エムポックスの症例が報告されている。アフリカ以外での持続的なヒト-ヒト伝播が確認されている。世界保健機関(World Health Organization:WHO)は,2022年のエムポックスのアウトブレイクを,国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態と宣言した(WHO: Monkeypox (Mpox) Outbreak 2022を参照)。流行国以外での確定症例は,大半が欧州および北米でみられている(Centers for Disease Control and Prevention [CDC]: 2022 Mpox Outbreak Global Mapを参照)。2023年3月までに米国では30,000例を超える症例が報告されている(CDC: 2022 US Map & Case Countを参照)。新規症例数は2022年8月にピークを迎えてから劇的に減少している。2022年の世界的なアウトブレイクに関連する症例は,これまでのところ全例が西アフリカ型である。症例は主に男性と性行為をする男性で報告されているが,エムポックスと一致する発疹で受診した患者では,全例でエムポックスを考慮すべきである(2, 3)。

動物からヒトへの伝播においては,エムポックスはおそらく,唾液または呼吸器飛沫や創傷滲出液との接触など,体液を介して伝播すると考えられる。これは,動物による咬傷や擦過傷を介して,あるいは感染動物の肉の調理や摂取を通じて起こる可能性がある。

ヒトからヒトへの感染は,長時間に及ぶ濃厚接触を通じて起こる。伝播の経路としては,長時間の対面または親密な身体的接触を介した呼吸器飛沫,感染性のある病変やその他の体液との直接接触,病変の痂皮または体液で汚染された衣類やリネン類といった媒介物との接触などがある。胎盤を介して母子感染が起きる可能性がある。精液または腟液を介して伝播が起きるうるかどうかは,現在のところ不明である。2022年のアウトブレイクでは,多くの症例が性的または親密な接触中に起きた伝播により発生したとみられるが,こうした伝播は感染性のある病変または気道分泌物との直接接触を介して起きる可能性が高い。

潜伏期間は1~2週間であるが,3週間に及ぶこともある。他者への感染性は,症状が出現してから全ての病変が痂皮化し,痂皮が剥がれて正常な皮膚が現れるまで持続する。これには典型的には2~4週間を要する。

アフリカでの伝播研究の結果によると,既知のヒト感染源と接触した後の全体的な二次発病率は3%であり,エムポックス感染者と同居する人々での発病率は最大50%と報告されている(4)。流行下では病院環境での伝播が報告されている。医療従事者の感染が1例報告されている(5)。致死率は,コンゴ盆地型では10%以下であるのに対し,西アフリカ型では1%未満である。

参考文献

  1. 1.Reynolds MG, Yorita KL, Kuehnert MJ, et al: Clinical manifestations of human monkeypox influenced by route of infection.J Infect Dis 194(6):773-80, 2006.doi: 10.1086/505880.Epub 2006 Aug 8.PMID: 16941343.

  2. 2.Centers for Disease Control and Prevention (CDC): Newsroom release: CDC and health partners responding to monkeypox case in the U.S, May 2022.Accessed July 26, 2022.

  3. 3.CDC: Case Definitions for Use in the 2022 Monkeypox Response.Accessed July 26, 2022.

  4. 4.Nolen LD, Osadebe L, Katomba J, et al: Extended human-to-human transmission during a monkeypox outbreak in the Democratic Republic of the Congo.Emerg Infect Dis 22 (6):1014–1021, 2016.doi: 10.3201/eid2206.150579

  5. 5.Zachary KC, Shenoy ES: Monkeypox transmission following exposure in healthcare facilities in nonendemic settings: Low risk but limited literature.Infect Control Hosp Epidemiol 43(7):920-924, 2022.doi: 10.1017/ice.2022.152.Epub 2022 Jun 9.PMID: 35676244; PMCID: PMC9272466.

エムポックスの症状と徴候

臨床的には,エムポックスは天然痘に類似する。前駆症状としての発熱,頭痛,倦怠感に続いて発疹が出現するが,発疹は斑および丘疹から深在性の硬い水疱または膿疱へと進行し,それらは臍窩を形成して痂皮を作り,時間とともに脱落する。エムポックスではリンパ節腫脹がみられるが,天然痘ではみられない。

しかしながら,2022年の世界的なアウトブレイクでは非定型の臨床像が報告されており,そのために診断が遅れる可能性がある。2022年のアウトブレイクでは,発疹が性器,肛門周囲,または口腔領域から始まったとの報告がしばしばみられ,また発疹は必ずしも典型的な段階を追って播種を起こしたり進行したりするわけではない。病変部位の疼痛,具体的には直腸炎または口腔痛が主訴となることがある。全身性の前駆症状についても,軽度であったり,現れなかったり,発疹と同時に出現したりすることがある。皮膚および肺に細菌の二次感染が起こることがある。

エムポックスを臨床所見から天然痘やヘルペスウイルス感染症(水痘単純ヘルペスウイルス(HSV)感染症など)と鑑別するのは困難なことがある。さらに,HSVや他の性感染症と診断されていても,エムポックスの同時感染を除外することはできない。

エムポックス
エムポックス
エムポックス

エムポックスは臨床的に天然痘と類似する。2022年のアウトブレイク以前は,どの部位に生じた皮膚病変も同じ段階を追って進行していた。

2022年の世界的なアウトブレイクでは,非定型の臨床像として,性器,肛門周囲,または口腔領域から始まる皮膚病変や,特定の解剖学的部位に限局する病変,特定の解剖学的部位で進行段階が異なる病変(例,水疱と膿疱が併存する)などが報告されている。

天然痘とは異なり,エムポックスではリンパ節腫脹がよくみられる。

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Image courtesy of the Public Health Image Library of the Centers for Disease Control and Prevention.

エムポックス
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エムポックスは臨床的に天然痘と類似する。2022年のアウトブレイク以前は,どの部位に生じた皮膚病変も同じ段階を追って進行していた。

2022年の世界的なアウトブレイクでは,非定型の臨床像として,性器,肛門周囲,または口腔領域から始まる皮膚病変や,特定の解剖学的部位に限局する病変,特定の解剖学的部位で進行段階が異なる病変(例,水疱と膿疱が併存する)などが報告されている。

天然痘とは異なり,エムポックスではリンパ節腫脹がよくみられる。

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Image from U.K.Health Security Agency.

エムポックス
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エムポックスは臨床的に天然痘と類似する。2022年のアウトブレイク以前は,どの部位に生じた皮膚病変も同じ段階を追って進行していた。

2022年の世界的なアウトブレイクでは,非定型の臨床像として,性器,肛門周囲,または口腔領域から始まる皮膚病変や,特定の解剖学的部位に限局する病変,特定の解剖学的部位で進行段階が異なる病変(例,水疱と膿疱が併存する)などが報告されている。

天然痘とは異なり,エムポックスではリンパ節腫脹がよくみられる。

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エムポックス
エムポックス

エムポックスは臨床的に天然痘と類似する。2022年のアウトブレイク以前は,どの部位に生じた皮膚病変も同じ段階を追って進行していた。

2022年の世界的なアウトブレイクでは,非定型の臨床像として,性器,肛門周囲,または口腔領域から始まる皮膚病変や,特定の解剖学的部位に限局する病変,特定の解剖学的部位で進行段階が異なる病変(例,水疱と膿疱が併存する)などが報告されている。

天然痘とは異なり,エムポックスではリンパ節腫脹がよくみられる。

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エムポックス
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エムポックスは臨床的に天然痘と類似する。2022年のアウトブレイク以前は,どの部位に生じた皮膚病変も同じ段階を追って進行していた。

2022年の世界的なアウトブレイクでは,非定型の臨床像として,性器,肛門周囲,または口腔領域から始まる皮膚病変や,特定の解剖学的部位に限局する病変,特定の解剖学的部位で進行段階が異なる病変(例,水疱と膿疱が併存する)などが報告されている。

天然痘とは異なり,エムポックスではリンパ節腫脹がよくみられる。

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エムポックス
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エムポックスは臨床的に天然痘と類似する。2022年のアウトブレイク以前は,どの部位に生じた皮膚病変も同じ段階を追って進行していた。

2022年の世界的なアウトブレイクでは,非定型の臨床像として,性器,肛門周囲,または口腔領域から始まる皮膚病変や,特定の解剖学的部位に限局する病変,特定の解剖学的部位で進行段階が異なる病変(例,水疱と膿疱が併存する)などが報告されている。

天然痘とは異なり,エムポックスではリンパ節腫脹がよくみられる。

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Image from NHS England High Consequence Infectious Disease Network.

エムポックス
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エムポックスは臨床的に天然痘と類似する。2022年のアウトブレイク以前は,どの部位に生じた皮膚病変も同じ段階を追って進行していた。

2022年の世界的なアウトブレイクでは,非定型の臨床像として,性器,肛門周囲,または口腔領域から始まる皮膚病変や,特定の解剖学的部位に限局する病変,特定の解剖学的部位で進行段階が異なる病変(例,水疱と膿疱が併存する)などが報告されている。

天然痘とは異なり,エムポックスではリンパ節腫脹がよくみられる。

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Image from NHS England High Consequence Infectious Disease Network.

エムポックス
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エムポックスは臨床的に天然痘と類似する。2022年のアウトブレイク以前は,どの部位に生じた皮膚病変も同じ段階を追って進行していた。

2022年の世界的なアウトブレイクでは,非定型の臨床像として,性器,肛門周囲,または口腔領域から始まる皮膚病変や,特定の解剖学的部位に限局する病変,特定の解剖学的部位で進行段階が異なる病変(例,水疱と膿疱が併存する)などが報告されている。

天然痘とは異なり,エムポックスではリンパ節腫脹がよくみられる。

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RICHARD USATINE MD / SCIENCE PHOTO LIBRARY

エムポックスの診断

  • PCR法

エムポックスの診断は,それぞれの実施可能性に応じて培養,PCR法,免疫組織化学法,電子顕微鏡法のいずれかによって下される。

皮膚病変(水疱蓋/膿疱上蓋もしくは水疱液/膿疱液および/または乾燥した痂皮)を検体とするPCR検査が至適な検査法である。血液PCRは,ウイルス血症の持続期間が短いため限界があり,推奨されない。米国では,PCR検査は公衆衛生研究所と民間研究施設を通じて利用可能である。

特徴的な病変(中心臍窩を伴う深在性の水疱または膿疱)がみられる患者だけでなく,臨床的に該当する病変と疫学的な危険因子を有する患者でも,検査を考慮すべきである。(CDC: Case Definitions for Use in the 2022 Mpox Responseも参照のこと。)

エムポックスの治療

大半のエムポックス患者は軽症で自然に軽快する。これは特に,現在の世界的なアウトブレイクの原因となっている西アフリカ型によく当てはまる。治療は鎮痛薬,輸液,および創傷ケアによる対症療法である。

重症患者,合併症がある患者,および重症化のリスクがある患者には,抗ウイルス薬による治療を考慮すべきである。これには,出血または融合がみられる病変,粘膜または性器病変,入院を必要とするその他の合併症がある患者や,易感染状態の患者,小児患者,妊娠中または授乳中の患者,皮膚の剥脱が起きる活動性疾患を有する患者などが含まれる。エムポックスウイルスの感染症に対して有効性が証明された安全な特異的治療法はない。それでも,治療では以下の選択肢がある:

  • 抗ウイルス薬のテコビリマト:米国では天然痘の治療薬として食品医薬品局(Food and Drug Administration:FDA)の承認を受けており,全年齢のエムポックス患者に対する一次治療または早期の経験的治療として,Expanded Access Investigational New Drug(IND)プロトコルを介してCDCから経口および静注製剤を入手できるようになっている;EUでは天然痘およびエムポックスを適応として承認されている。

  • 抗ウイルス薬のシドホビル(cidofovir)(市販されている)またはブリンシドホビル(brincidofovir)(CMX001,single-patient emergency use INDを介して入手可能)

  • ワクシニア免疫グロブリン(IV),Expanded Access INDプロトコルを介してCDCから入手可能

  • 眼病変に対するトリフルリジン点眼液

これらの薬剤はいずれも,in vitro試験と実験モデルでエムポックスに活性を示すが,臨床的有効性を実証するデータはまだ得られていない。これらは現在のアウトブレイクで広く使用されており,臨床試験が進行中である。CDCは,入手可能なエビデンスと経験に基づき,2023年3月に治療検討のアルゴリズムを策定した(1)。(CDC: Information for Healthcare Providers on Obtaining and Using TPOXX [Tecovirimat] for Treatment of MpoxCDC: Mpox: Treatment Information for Healthcare Professionalsも参照のこと。)

治療に関する参考文献

  1. 1.Rao AK, Schrodt CA, Minhaj FS, et al: Interim Clinical Treatment Considerations for Severe Manifestations of Mpox — United States, February 2023.MMWR Morb Mortal Wkly Rep 72:232–243, 2023.doi: 10.15585/mmwr.mm7209a4

エムポックスの予防

予防接種

エムポックスウイルスは天然痘の原因ウイルスと非常に近縁であるため,天然痘ワクチンはエムポックスの予防法として少なくとも85%の効果を示すことが,アフリカでの過去の観察データから示唆されている(1)。ただし,天然痘ワクチンの接種によって必ずしも終生免疫が得られるわけではないが,発症時の重症度が低下する可能性は高い。JYNNEOS(MVA-BN)およびACAM2000という2つの天然痘ワクチンをエムポックスの予防に使用することができる(WHO: Vaccines and immunization for monkeypox: Interim guidance, 16 November 2022を参照)。

JJYNNEOSワクチンは,接種者の体内で増殖することがない弱毒生ワクシニアウイルスである。エムポックス(または天然痘)のリスクが高い18歳以上の成人におけるエムポックス(および天然痘)の予防を適応とする。このワクチンは現在のアウトブレイクにおいて米国で使用されている主要なワクチンである。CDCは,エムポックスへの曝露リスクが高い個人とエムポックスへの最近の曝露歴が判明ないし推定される個人を対象として,JYNNEOSワクチンの接種を推奨している。曝露後予防(PEP)として使用する場合は,理想的には曝露後4日以内に接種すべきであるが,曝露後14日までは有益となりうる(CDC: Mpox Vaccination Basicsを参照)。このワクチンは4週間の間隔を空けて計2回,皮内または皮下注射で接種する。

現在のアウトブレイクにおけるJYNNEOSワクチンの有効性について,限定的ながらデータが得られてきている。米国の32の行政管轄区域において,JYNNEOSワクチン接種の適格年齢である18~49歳の男性におけるエムポックスの発生率を調査した結果では,ワクチン接種を受けていない男性での発生率が14日以上前に1回目の接種を受けた男性の14倍であった(CDC: Rates of Mpox Cases by Vaccination Statusを参照)。JYNNEOSワクチンは免疫機能が低下している個人に接種してもよいが(ACAM2000とは異なる),その場合は反応が減弱する可能性がある。

ACAM2000ワクチンは,天然痘ウイルスと近縁のワクシニアウイルスを含有する生ワクチンであり,サル痘および天然痘ウイルスに対する交差免疫を誘導する。エムポックス(または天然痘)のリスクが高い人々で適応となる。米国ではExpanded Access Investigational New Drugプロトコルの下でエムポックスに対して使用可能である。ACAM2000は,ワクチンに浸した特性の針で小さな領域を15回素早く突くことによって接種される。これで1回の接種とみなされる。その後,接種部位をドレッシング材で被覆して,他部位や他者にワクチンウイルスが伝播するのを防止する。約7日後に小さな水疱が現れれば,ワクチン接種が成功したと判断する。現れない場合は,もう一度接種する。

ACAM2000による予防接種は危険であり,一部の人,特に以下の危険因子を有する人には推奨されない:

  • 免疫機能の低下(AIDS患者や免疫系を抑制する薬剤を使用している患者など)

  • 皮膚疾患(特にアトピー性皮膚炎[湿疹])

  • 眼の炎症

  • 心臓の病態

  • 年齢1歳未満

  • 妊娠

感染制御

入院していないエムポックス患者は以下の対策を講じるべきである:

  • 病変が消失して痂皮が脱落し,新たに正常な皮膚の層が形成されるまで,自宅隔離とする

  • 他者や動物との直接的な身体的接触を避ける

  • 寝具,タオル,衣服,コップ,食器など,汚染の可能性がある物品の共用を控え,よく接触する表面および物品を清浄化および消毒する

  • 家庭内で他者との濃厚接触が避けられない場合は,マスクを着用する

病院内での感染制御策としては,患者を個室に収容してドアを閉めることなどがある。感染性のある口腔内分泌物を拡散させる可能性が高い処置(例,挿管,抜管)を行わない限り,特別な空気処理は必要ない。乾燥した汚染物が空中または表面上に散布される可能性がある行為(例,扇風機を使用する,汚れた寝具を揺さぶる)は避けるべきである。適切な個人防護具(PPE)としては,ガウン,手袋,N95マスク(または同等のもの),眼の保護具などがある。標準的な消毒には,新規ウイルス病原体に対する効能が認められた米国環境保護庁認定の病院グレードの消毒剤を使用すべきである。西アフリカ型の患者では,廃棄物を感染性医療廃棄物に関する通常のガイドラインに従って取り扱うことができる。コンゴ盆地型の患者については,医療廃棄物が米国運輸省の有害物質規制下でカテゴリーAに分類されているため,これに従って管理すべきである(CDC: Infection Prevention and Control of Mpox in Healthcare Settingsを参照)。

エムポックス患者を担当する全ての医療従事者は,最後の接触から21日間にわたり,少なくとも1日2回の頻度で,症状の有無を調べるモニタリングを受けるべきである。高リスクの曝露者(CCDC: Mpox: Monitoring and Risk Assessment for Persons Exposed in the Communityを参照)には,JYNNEOSまたはACAM2000のワクチン接種による曝露後予防を勧めるべきである。ワクチン接種は理想的には曝露後4日以内に行うべきであるが,曝露後14日までは効果が得られる可能性がある。

予防に関する参考文献

  1. 1.Jezek Z, Grab B, Szczeniowski MV, et al: Human monkeypox: secondary attack rates.Bull World Health Organ 66(4):465-70, 1988.PMID: 2844429; PMCID: PMC2491159.

より詳細な情報

有用となりうる英語の資料を以下に示す。ただし,本マニュアルはこれらの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。

  1. CDC: Mpox: 2022 Outbreak Cases and Data

  2. WHO: Multi-country monkeypox outbreak: situation update

  3. WHO: Fact sheets: Monkeypox

  4. CDC: Mpox

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