他の医学的状態による精神症

他の医学的状態による精神症（psychotic disorder due to another medical condition）とは，他の身体疾患によって引き起こされる幻覚または妄想を特徴とする。

精神症とは，妄想，幻覚，思考および発語の統合不全，現実との接触の喪失を示唆する奇異で不適切な行動（カタトニアを含む）などの一連の症状を指す。

この診断名は，精神症症状が医学的疾患の生理学的影響に起因する場合に適用される。例としては，ときに側頭葉てんかんに合併する精神症的な行動または幻嗅，および，ときに頭頂葉病変により引き起こされるcontralateral neglect syndromeがある。

精神症を引き起こすことのある他の身体疾患としては，中枢神経系の腫瘍および感染症，脳卒中，片頭痛，ないしは様々な内分泌疾患などがある。

身体疾患に対する心理的な反応（例，集中治療室［ICU］症候群），薬物の作用による精神症もしくは薬物離脱の作用による精神症，または医学的疾患によるせん妄が認められる場合には，この診断名は適用されない。

身体疾患と精神症との時間的関係（すなわち，両者が同時期に始まって同時に終わる）を明らかにすることが不可欠である。

身体疾患を治療することでしばしば精神症症状の重症度が低下するが，一部の患者では精神症症状の特異的な治療も必要となる。

（統合失調症および関連症群に関する序論も参照のこと。）