デュピュイトラン拘縮は手掌腱膜(筋膜帯)の進行性の拘縮であり,手指の屈曲変形を引き起こす。治療は,コルチコステロイド注射,外科手術,またはクロストリジウム由来のコラゲナーゼの注射による。
(手疾患の概要および評価も参照のこと。)
デュピュイトラン拘縮はよくみられる手の変形の1つであり,発生率は男性の方が高く,45歳を過ぎると増加する。浸透率が一定でないこの常染色体顕性遺伝(優性遺伝)疾患は,糖尿病,アルコール依存症,またはてんかんの患者に発生する頻度が高い可能性がある。しかし,手掌腱膜の肥厚および拘縮を引き起こす特異的な因子は不明である。
デュピュイトラン拘縮の症状と徴候
DR P. MARAZZI/SCIENCE PHOTO LIBRARY
最初の症候は通常,手掌における圧痛のある結節であり,小指または環指の付近に最もよくみられ,徐々に痛みがなくなる。次に表在性の索が生じ,手指の中手指節(MCP)関節および指節間関節を拘縮させ,最終的に屈曲させる。手は最終的にはアーチ形になる。本症は,ときに近位指節間(PIP)関節背側の線維性肥厚(Garrod pad),約7~10%の患者でペロニー病(陰茎の線維腫症),まれに足底面の結節(足底線維腫症[plantar fibromatosis])を伴う。
また,他の種類の手指の屈曲変形が糖尿病,曲がったまま動かなくなった弾発指,鷲手,全身性強皮症,および慢性の反射性交感神経性ジストロフィーで生じることがあり,これらの病態を鑑別する必要がある。
デュピュイトラン拘縮の治療
コルチコステロイド注射(拘縮が発生する前)
生活に支障を来す拘縮に対し手術
特定の拘縮に対するクロストリジウム由来のコラゲナーゼの注射
小結節へのコルチコステロイド懸濁液の注入は,拘縮が発生する前に開始すれば,局所の圧痛を軽減することがある。しかし,この圧痛は自然に軽快し,介入なしに消失することが多い。
手をテーブルの上に平らな状態で置けない場合や,特に近位指節間(PIP)関節に有意な拘縮が起きている場合は,通常は手術の適応となる。外科的な選択肢としては,経皮的ニードル筋膜切開術(percutaneous needle fasciotomy),PIP関節の拘縮に対するdynamic式の創外固定器の一時的な装着,開放手術での手掌/指の筋膜切除術などがある。複数の指が侵されている重症例に対しては,腱膜病変部の切除を伴う開放手術が最良の治療法である;病変組織は神経血管束および腱を取り巻いているため,切除には細心の注意が必要である。不完全な切除または新たな病変により,結果として拘縮が再発する(特に発症年齢が低いもしくは家族歴がある患者,Garrod padを呈する患者,ペロニー病患者,または足底の病変のある患者の場合)。
注射用コラゲナーゼは一部の拘縮(特にMCP関節の拘縮)を改善することがある(1,2)。コラゲナーゼの注射および筋膜切除術によってMCP関節で同程度の改善が得られるが,注射の方が回復が早く,早期の合併症が少ない(3)。しかしながら,コラーゲナーゼ注射,経皮的ニードル筋膜切開術,および筋膜切除術の中期成績(治療から2~5年後)を比較すると,注射は再度の介入を必要とする再発の頻度が最も高く,手術による筋膜切除術が拘縮の再発率が最も低かった。
治療に関する参考文献
1.Hurst LC, Badalamente MA, Hentz VR, et al: Injectable collagenaseClostridium histolyticum for Dupuytren's contracture.N Engl J Med 361(10):968–979, 2009.doi: 10.1056/NEJMoa0810866.
2.Witthaut J, Jones G, Skrepnik N, et al: Efficacy and safety of collagenaseClostridium histolyticum injection for Dupuytren contracture: Short-term results from 2 open-label studies.J Hand Surg Am 38(1):2–11, 2013.doi: 10.1016/j.jhsa.2012.10.008.
3.Zhou C, Hovius SE, Slijper HP, et al: CollagenaseClostridium histolyticum versus limited fasciectomy for Dupuytren's contracture: Outcomes from a multicenter propensity score matched study.Plast Reconstr Surg 136(1):87–97, 2015.doi: 10.1097/PRS.0000000000001320.