大動脈瘤の概要

執筆者:Mark A. Farber, MD, FACS, University of North Carolina;
Federico E. Parodi, MD, University of North Carolina School of Medicine
レビュー/改訂 2023年 8月
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動脈瘤とは,動脈壁の脆弱化により動脈が異常に拡張した状態である。一般的な原因としては,高血圧,動脈硬化,感染,外傷,全身性リウマチ疾患,結合組織疾患(例,マルファン症候群,エーラス-ダンロス症候群)などがある。動脈瘤は通常無症状であるが,疼痛を引き起こしたり,虚血,血栓塞栓症,自然解離,破裂を来して致死的となることもある。診断は画像検査(例,超音波検査,CT血管造影,MRアンギオグラフィー,大動脈造影)による。未破裂動脈瘤では,症状と動脈瘤の大きさおよび位置に応じて,内科的管理または修復による治療が選択される。内科的管理には,危険因子の是正(例,厳格な血圧コントロール)や定期的な画像検査によるサーベイランスなどが含まれる。修復は外科的アプローチと血管内アプローチのいずれかで行うことができる。破裂動脈瘤の治療は即時の修復である。

    大動脈は,左室の大動脈弁上部から始まり,大動脈の第一分枝(腕頭ないし無名動脈)まで上行して(上行大動脈),心臓の上後方に向かって弧を描き(大動脈弓),続いて左鎖骨下動脈を過ぎてから下方に向かい(下行大動脈),胸郭(胸部大動脈)および腹部(腹部大動脈)を下降する。腹部大動脈は左右の総腸骨動脈に分岐して終わる。

    動脈瘤のX線像
    上行大動脈を示した胸部のCT血管造影(CTA)画像(冠状断像)
    上行大動脈を示した胸部のCT血管造影(CTA)画像(冠状断像)

    この画像には,左室(青矢印)から起始した胸部の上行大動脈(赤矢印)が写っている。

    © 2017 Elliot K.Fishman, MD.

    腹部大動脈を示した腹部のCT血管造影(CTA)画像(冠状断像)
    腹部大動脈を示した腹部のCT血管造影(CTA)画像(冠状断像)

    この画像には,右(青矢印)と左(緑矢印)の総腸骨動脈に分岐する腹部大動脈(赤矢印)が写っている。

    © 2017 Elliot K.Fishman, MD.

    大動脈と肺動脈の構造を示した胸部CT画像
    大動脈と肺動脈の構造を示した胸部CT画像

    この画像には,胸部の上行大動脈(赤矢印)と下行大動脈が写っている。肺動脈幹(緑矢印)は右(紫矢印)と左(黄色矢印)の肺動脈に分岐する。

    © 2017 Elliot K.Fishman, MD.

    血管内ステントグラフト
    血管内ステントグラフト

    白矢印は,大動脈瘤(赤矢印)内の血管内ステントグラフトを示している。

    © 2017 Elliot K.Fishman, MD.

    大動脈壁は以下の3つの層で構成される:

    • 内膜:内側を内皮で覆われた薄い層

    • 中膜:らせん状に配置された弾性線維で構成される厚い層

    • 外膜:中膜に栄養を供給する薄い線維性の層

    動脈瘤は,動脈が異常に拡張したものであり,正常部位と比べて動脈径が50%以上増大した場合と定義される。動脈壁(特に中膜)が脆弱化することで生じる。真性動脈瘤では,動脈の3層構造(内膜,中膜,外膜)全てを伴って拡張する。動脈瘤疾患は通常,局所的な問題ではなく(しばしば複数の因子に起因している),時間の経過とともに大動脈に沿って進展する可能性がある。

    仮性動脈瘤(偽性動脈瘤)は,動脈壁の破綻により動脈内腔と周囲の結合組織との間に交通が生じ,血管壁の外側に血液で満たされた腔が形成され,血栓化して血液の漏出が閉鎖されたものである。

    動脈瘤は以下のように分類される:

    • 紡錘状:動脈の円周方向に拡大したもの

    • 嚢状:動脈壁が局所で(典型的には非対称な)袋状に突出したもの

    どちらの種類の動脈瘤でも,発生部分で血流が変化する結果として,壁面が複数の層で形成された血栓(層状血栓)で覆われることがある。

    動脈瘤はあらゆる動脈に生じうる。最も頻度が高く重大なものは以下のものである:

    大動脈の主要分枝(鎖骨下および内臓動脈)の動脈瘤ははるかに少ない。末梢動脈の動脈瘤と(脳卒中の原因となる)脳血管系の動脈瘤については,本マニュアルの別の箇所で考察されている。

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