クループ

(喉頭気管気管支炎)

執筆者:Rajeev Bhatia, MD, Phoenix Children's Hospital
レビュー/改訂 2022年 1月
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クループは上下気道の急性炎症であり,1型パラインフルエンザウイルスの感染によって引き起こされることが最も多い。金属音様で犬吠様の咳嗽と吸気性喘鳴(stridor)を特徴とする。診断は通常臨床的に明白であるが,頸部X線の前後像によっても診断可能である。治療では,解熱薬,水分,霧状のラセミ体アドレナリン,およびコルチコステロイドを投与する。予後は極めて良好である。

クループは主に生後6カ月から3歳の小児が罹患する。

クループの病因

最も頻度が高い病原体は以下のものである:

比較的まれな原因としてRSウイルス(RSV)とアデノウイルスがあり,A型およびB型インフルエンザウイルスエンテロウイルス,ライノウイルス,麻疹ウイルス,および肺炎マイコプラズマなどがそれに続く。インフルエンザによるクループは特に重症で,広い年齢層の小児に起こりうる。

季節的アウトブレイクがよくみられる。パラインフルエンザウイルスに起因する症例は秋にみられる傾向があり,RSVおよびインフルエンザウイルスに起因する症例は冬から春にかけてみられる傾向がある。伝播は通常,空気感染,または感染分泌物との接触による。

クループの病態生理

感染すると,喉頭,気管,気管支,細気管支,および肺実質に炎症が起こる。腫脹や炎症性滲出物による閉塞が生じ,声門下部で顕著になる。閉塞により呼吸仕事量が増え,まれに,疲労により高炭酸ガス血症に至る。細気管支が閉塞する場合は,無気肺を併発することがある。

クループの症状と徴候

クループには一般的に上気道感染症状が先行する。その後,一般的には夜間に,犬吠様の(しばしば発作的な)咳嗽および嗄声が生じるほか,吸気性喘鳴がみられる場合もある。患児は,呼吸窮迫,頻呼吸,および陥没呼吸によって夜間に目を覚ますことがある。重症例では,患児の疲労とともに呼吸が浅くなりチアノーゼが生じる場合がある。

明白な呼吸窮迫と荒い吸気性喘鳴が最も印象的な身体所見である。聴診では吸気延長および吸気性喘鳴を認める。断続性ラ音を呈することもあり,下気道が侵されていることを示唆する。無気肺で呼吸音が減弱することがある。発熱は約半数の患児でみられる。病状は朝には改善するようにみえるが夜には再び悪化する。

オーディオ

反復するものはしばしば痙攣性クループと呼ばれる。痙攣性クループでは,アレルギーまたは気道反応性がある程度関与している可能性があるが,臨床像はウイルス性クループのものと区別がつかない。また,痙攣性クループも通常はウイルス感染が最初の原因であるが,一般に発熱はみられない。

クループの診断

  • 臨床像(例,犬吠様咳嗽,吸気性喘鳴)

  • 必要に応じて頸部X線(前後像および側面像)

クループの診断は通常,犬吠様の咳嗽から明白である。類似の吸気性喘鳴は,喉頭蓋炎細菌性気管炎,気道異物,ジフテリア,および咽後膿瘍によっても起こりうる。喉頭蓋炎,咽後膿瘍,および細菌性気管炎の場合,発症はより急速で,重症感(toxic appearance)がより強く,嚥下痛が生じ,上気道症状は少ない。異物によって呼吸窮迫および典型的なクループ様咳嗽が生じることがあるが,発熱および先行する上気道感染はみられない。ジフテリアは,十分な予防接種歴により除外され,典型的には灰色がかったジフテリアの偽膜からの剥離物のウイルス培養において菌が同定されれば確定される。

診断がはっきりしない場合は,患児は頸部および胸部のX線検査(前後像および側面像)を受けるべきである;頸部X線の前後像上での喉頭蓋下の狭小化(steeple sign)によって診断が裏付けられる。重篤な病状の患児は,喉頭蓋炎が懸念されるため,気道確保のできる適切な専門医によって手術室で診察すべきである( see page 治療)。パルスオキシメトリーを行うべきであり,呼吸窮迫を有する場合は動脈血ガス測定も行うべきである。

クループによる声門下の狭小化
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この前後X線像は,クループにより引き起こされる特徴的な気道の声門下の狭小化(steeple sign)を示している。
Image provided by Clarence T. Sasaki, MD.

パール&ピットフォール

  • 喉頭蓋炎,咽後膿瘍,および細菌性気管炎の場合,クループに比べ重症感(toxic appearance)が強く,金属音様で犬吠様の咳嗽は伴わない。

クループの治療

  • 外来の場合,加湿冷気および可能性として長時間作用型コルチコステロイドの1回投与

  • 入院患者には,加湿酸素,ラセミ体アドレナリン,およびコルチコステロイド

この疾患は通常,3~4日続き,自然に消失する。軽症の小児は,水分補給と解熱薬を用いて在宅で看護してもよい。疲労および啼泣で病状が悪化しうるため,患児の環境を快適に保つことが重要である。加湿装置(例,コールドスチーム噴霧器または加湿器)は上気道の乾燥を改善する可能性があり,しばしば家族が家で使用するが,疾患の経過を変えるとは示されていない。クループ患児の大多数は完治する。

入院は一般に以下の患者で適応となる:

  • 呼吸窮迫の増悪または持続

  • 頻脈

  • 疲労

  • チアノーゼまたは低酸素血症

  • 脱水

パルスオキシメトリーは重度の症例の評価およびモニタリングに役立つ。酸素飽和度が92%未満に低下した場合,加湿酸素を投与し,CO2蓄積を評価するため動脈血ガスを測定すべきである。吸気酸素濃度は30~40%で通常は十分である。CO2蓄積(PaCO2 > 45mmHg)は,酸素化を維持するのが不可能な場合と同様に,一般的に疲労と気管挿管の必要性を示唆する。

生理食塩水3mL中の霧状ラセミ体アドレナリン5~10mg,2時間毎の投与によって,症状が緩和し,疲労も軽減する。しかしながら,効果は一時的であり,疾患の経過,基礎のウイルス感染症,およびPaO2は,この投与によっては改善されない。頻脈および他の有害反応が起こることもある。この薬剤は主に中等度から重度のクループの患者に推奨される。

高用量デキサメタゾン0.6mg/kgの筋注または経口による1回投与(最大用量10mg)は,罹患後24時間以内で早い段階の患児に便益を与える可能性がある。これは入院を防ぐ,または中等度から重度のクループで入院している患児に有用である;迅速な反応を示さなかった入院児には数回の投与が必要な場合もある。クループを最も頻繁に起こすウイルスは通常,二次的な細菌感染を引き起こさないため,抗菌薬が適応となるのはまれである。

要点

  • クループとは生後6~36カ月の乳児が罹患する気道の急性ウイルス感染症で,典型的にはパラインフルエンザウイルス(主に1型)によって起こる。

  • 犬吠様,しばしば攣縮性の咳嗽およびときに吸気性喘鳴(声門下浮腫による)が最も著明な症状であり,症状はしばしば夜間に悪化する。

  • 診断は通常,臨床的に行うが,頸部および胸部のX線前後像で示される典型的な喉頭蓋下の狭小化(steeple sign)によって診断が支持される。

  • 加湿冷気または加湿冷却酸素,およびときにコルチコステロイド,霧状ラセミ体アドレナリンを投与する。

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