気道は,原発性気管気管支腫瘍,気道に近接し気道に浸潤または気道を圧迫する原発性腫瘍,もしくは気道に転移する腫瘍により侵されうる。
原発性気管腫瘍はまれである(0.1/100,000人)。この腫瘍はしばしば悪性で,局所進行期で発見される。
最も頻度が高い悪性気管腫瘍としては,腺様嚢胞癌,扁平上皮癌,カルチノイド,粘表皮癌などがある。
最も頻度が高い良性気道腫瘍は扁平上皮乳頭腫(ヒトパピローマウイルスに関連することが最も多い)であるが,多形性腺腫および顆粒細胞腫ならびに良性軟骨腫も生じうる。
気道腫瘍の症状と徴候
患者はしばしば以下の症状で受診する:
呼吸困難
咳嗽
呼気性喘鳴(wheezing)
喀血
吸気性喘鳴(stridor)
喀血はまれではあるが,扁平上皮癌で生じることが比較的多く,早期診断に結びつく可能性がある一方,呼気性喘鳴または吸気性喘鳴が腺様嚢胞癌に伴って生じる頻度はさらに高い。嚥下困難および嗄声が初期症状であることもあり,これらは通常進行例を示唆する。
気道腫瘍の診断
気管支鏡下生検
気道狭小化の症状(例,吸気性喘鳴,呼吸困難,呼気性喘鳴)は生命を脅かす気道閉塞の前兆となりうる。そのような症状について,原因が不明の場合,徐々に出現する場合,他の気道症状(例,原因不明の喀血)を伴っている場合,および標準治療への反応が不良(例,喘息に対して積極的治療を行っても呼気性喘鳴が緩和しない,肺炎のように見える病態に対して抗菌薬を投与しても症状とX線所見が改善しない)な場合は,可能性のある原因として気道腫瘍を考慮すべきである。
気道腫瘍が疑われた場合,直ちに気管支鏡検査により患者を評価する必要がある。気管支鏡検査により気道閉塞を解除できると同時に,診断のための検体を得ることもできる。がんが発見された場合,病期診断のためにより広範な検査が行われる。
気道腫瘍の予後
予後は組織型によって異なる。
扁平上皮癌は,所属リンパ節に転移する傾向および縦隔構造に直接浸潤する傾向があり,局所および所属リンパ節における再発率が高い。たとえ根治的な外科的切除を行っても,5年生存率はわずか20~40%である。
腺様嚢胞癌は典型的には緩徐進行性であるが,肺に転移する傾向,および神経周囲に浸潤する傾向があり,切除後の再発率が高い。しかしながら,この腫瘍は増殖が遅いため,5年生存率は60~75%と高い。
気道腫瘍の治療
手術
ときに放射線療法
閉塞解除手技
原発性気道腫瘍は,可能ならば外科的切除によって根治的に治療すべきである。気管,喉頭気管,または気管分岐部の切除術が最もよく実施される手技である。一次再吻合により,気管は最大で全長の50%を安全に切除できる。肺癌または甲状腺癌が気道に浸潤する場合,気道を再建するのに十分な組織が得られると評価で示唆されるならば,ときに手術が実施可能である。十分な切除縁が得られない場合は,アジュバント放射線療法が推奨される。
大部分の原発性気道腫瘍は,転移,局所進行,または併存症のため,切除不能である。気管支腔内の腫瘍の場合,治療目的の気管支鏡検査で機械的に腫瘍をくり抜き出すことができる。閉塞を解除する他の方法としては,レーザー蒸散法,光線力学療法,凍結療法,気管支内での密封小線源治療などがある。気管を圧迫する腫瘍は,気道ステント留置,放射線療法,またはそれらの併用で治療する。
気道腫瘍の要点
原発性気道腫瘍はまれであり,悪性であることが多く,一般的に発見時点では局所進行期である。
緩徐に進行する,原因不明の,または難治性の呼吸困難,咳嗽,呼気性喘鳴,喀血,または吸気性喘鳴がある患者では,気道腫瘍を疑う。
喀血が起こることもあるが,まれであり,典型的には扁平上皮癌によるものである。
治療は局所切除,または切除の適応がない場合は,その他の局所破壊療法によって行う。