食物アレルギー

執筆者:James Fernandez, MD, PhD, Cleveland Clinic Lerner College of Medicine at Case Western Reserve University
レビュー/改訂 2022年 10月
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やさしくわかる病気事典

食物アレルギーとは特定の食物に対するアレルギー反応です。

  • 代表的な誘因はピーナッツなどのナッツ類、甲殻類、魚、牛乳、卵、小麦、大豆です。

  • 症状は年齢によって変わりますが、発疹、喘鳴、鼻水などで、成人ではときに、さらに重篤な症状が現れます。

  • プリックテスト、血液検査、除去食によりアレルギー反応の引き金となる食物を特定できます。

  • 唯一効果的な治療法はその食物を食べないようにすることです。

アレルギー反応の概要も参照のこと。)

多種多様な食品がアレルギー反応を引き起こします。食物に対するアレルギー反応は重い場合があり、生命を脅かす可能性のあるアナフィラキシー反応が起こることもあります。

食物アレルギーは乳児期に始まることもありますが、成長するにつれて治まることがあるため、成人の食物アレルギー患者は多くありません。しかし、成人になっても食物アレルギーがある場合は、アレルギーが生涯続く傾向があります。

食物アレルギーが運動能力の低さに加え、小児の多動、慢性の疲労、関節炎、抑うつなどの原因であるといわれることがありますが、これらとの関連性は実証されていません。

食物に対する他の反応

食物への反応のすべてがアレルギー反応というわけではありません。

食物不耐症は、免疫系が関係しないため、食物アレルギーとは異なります。食物不耐症では、消化器で反応が起こって、消化器の調子が悪くなります。例として、牛乳に含まれる糖の消化に必要な酵素が欠乏している場合(乳糖不耐症)が挙げられます。

食物が汚染されていたり鮮度が落ちていたりする場合にも食物に対する反応が起きます。

また、食品添加物がアレルギー反応に類似した反応を起こすこともあります。例えば、一部の保存料(メタビスルファイトなど)や着色料(キャンデーや清涼飲料水などに用いる黄色着色料のタートラジンなど)は、喘息じんま疹などの症状を引き起こします。同様にチーズ、ワイン、チョコレートなどの食品で片頭痛が起きる人もいます。

食物アレルギーの原因

食物アレルギーは、典型的には免疫系が機能不全を起こして食べもののタンパク質を危険だと誤解することで発生します。免疫系がアレルゲンにさらされると、免疫系は免疫グロブリンE(IgE)という抗体を作ります。(アレルゲンとは、免疫系が認識し、免疫系による反応を刺激する分子のことです。)IgE抗体は、免疫系の細胞から周囲の組織に腫れや炎症を起こす物質(ヒスタミン、プロスタグランジン、ロイコトリエンなど)を放出させる引き金となります。これらの物質は反応の連鎖を引き起こし、組織を継続的に刺激し傷つけます。この反応の程度は軽度のものから重度のものまで様々です。

ほぼあらゆる食物や食品添加物がアレルギー反応の原因になる可能性があります。最も一般的な誘因は、年齢層によって異なります。

乳児と幼児における食物アレルギーでは、以下のような最も一般的なアレルギーの誘因(アレルゲン)に対してアレルギーを起こす傾向があります。

  • 牛乳

  • 小麦

  • ピーナッツ

  • 大豆

幼児が食物アレルギーを起こさないようにするために、これらの食物を食べさせないようにする親が大勢いますが、最近の科学的根拠から、ピーナッツを含む食品を乳児に定期的に与えることが、ピーナッツアレルギー発症の予防に役立つ可能性があることが示唆されています。このアプローチに対するさらなる研究が必要です。

年長児以上と成人で最も一般的な誘因は、以下のアレルゲンです。

  • ナッツ類

  • 貝類や甲殻類を含む魚介類

食物に含まれるものに似た他のアレルゲン(花粉など)にさらされると、食物に含まれる物質に対して抗体ができるきっかけとなり、それにより食物アレルギーを発症することがあります。この過程を感作といいます。例えば、ピーナッツアレルギーの小児は、発疹の治療にラッカセイ油を含む外用クリームを使用したときにピーナッツに感作されていることがあります。また、ラテックスアレルギーの多くの人がバナナ、キウイ、アボカドやそれらの組合せに対してもアレルギーがあります。ラテックスとこれらの果物は、よく似たアレルゲンを含んでいます。

小児の食物アレルギーは、両親に食物アレルギーやアレルギー性鼻炎アレルギー性喘息がある場合により多くみられます。

アルファガル症候群

アルファガル(α-gal)症候群は、最近発見された赤身肉に対するまれな形態のアレルギーです。アルファガルは大半の哺乳類にみられる糖ですが、魚、鳥、爬虫類、ヒトにはみられません。ローンスターダニは主に米国南東部に生息し、その唾液にアルファガルが含まれています。ローンスターダニが人間を咬むと、その人の体にアルファガルが入ります。そうなると、免疫系がアルファガルに対する抗体を作り、結果としてアルファガルに対するアレルギーが起こることがあります。アルファガルは多くの赤身肉(豚肉、牛肉、羊肉、鹿肉など)や哺乳類から作られた食べもの(乳製品、ゼラチンなど)に含まれているため、これらの抗体をもつ人はこれらの食べものに対してアレルギー反応を起こすことがあります。

アルファガル症候群の症状としては、かゆみのある発疹、消化不良、便秘、吐き気、アナフィラキシー反応などがあり、他の食物アレルギーとは異なり、アルファガル症候群の症状は多くの場合食後3~8時間まで出現しません。

口腔アレルギー症候群

口腔アレルギー症候群(花粉食物アレルギー症候群)は、花粉に対するアレルギーのある人に起こります。花粉に含まれるタンパク質には、食べものに含まれる一部のタンパク質とよく似ているものがあります。そのため、口腔アレルギー症候群のある人は、そのような似たタンパク質を含む食べものに対してもアレルギー反応を起こします(交差反応と呼ばれます)。関与する食べものは、多くの場合、ナッツ類や生の果物や野菜です。熱によりタンパク質の構造が変化し、食べもののタンパク質が花粉のタンパク質に似たものではなくなるため、通常、これらの食べものは加熱調理すれば食べられます。

特定の花粉にアレルギーのある人は、以下のような特定の食物に対してもアレルギーがあることがよくあります。

  • カバノキの花粉:リンゴ、アーモンド、ニンジン、セロリ、チェリー、ヘーゼルナッツ、キウイ、モモ、ナシ、プラム

  • イネ科植物の花粉:セロリ、メロン、オレンジ、モモ、トマト

  • ブタクサの花粉:バナナ、キュウリ、メロン、ヒマワリの種、ズッキーニ

食べものを食べると、口と喉にかゆみを感じます。重度アレルギー反応(アナフィラキシー反応)は、可能性は低いですが起こることがあります。

医師は通常、花粉アレルギーのある人が特定の食べものを食べた後にアレルギー症状が現れる場合に口腔アレルギー症候群を診断できます。診断を確定するために、プリックテストがときに行われます。

口腔アレルギー症候群は、多くの場合、問題の食べものを生で食べないようにしたり、完全に火を通すことで管理できます。医師は、このアレルギーのある人に対して、あらかじめアドレナリンが充填された自己注射器を携帯するように勧めます。

食物アレルギーの症状

食物アレルギーの症状は、アレルギーの原因となる食物や、患者の年齢によって異なります。

乳児では食物アレルギーの最初の症状としてアトピー性皮膚炎などの湿疹や、じんま疹に似た発疹がみられることがあります。発疹とともに、吐き気、嘔吐、下痢が起こることがあります。1~2歳になる頃までには、発疹はあまり出なくなりますが、アレルゲン(花粉など)を吸い込むことによるアレルギー反応が出始め、喘息の症状が出ることもあります。アレルギーの引き金となる食品を食べると、喘鳴や息切れ、鼻水などが現れることがあります。10歳ごろまでには、食品摂取による喘息症状はほとんどみられなくなります。

年長の小児や成人で食物アレルギーが発生すると、反応がより重度になる傾向があります。成人の食物アレルギーでは口のかゆみ、じんま疹、湿疹、腫れ(血管性浮腫)場合によっては、鼻水や喘息が起こります。食物アレルギーによって、ときにふらつきや失神などの症状が引き起こされることがあります。

また食物アレルギーのある成人の中には、わずかな量の食物を口にしただけで、急に重度の反応が起こる人もいます。発疹が全身に現れ、のどが腫れて気道が狭くなるために呼吸困難になります(アナフィラキシー反応といい、生命が脅かされることがあります)。

また、人によっては食品(特に小麦やエビ)に対するアレルギー反応が、食べてすぐ運動した場合にだけ起こることもあります(運動誘発アレルギー反応と呼ばれます)。

一部の食物アレルギー反応では、発生してから腹痛、吐き気、差し込むような痛み、下痢などの症状が現れるまでに数時間かかります。

食物アレルギーの診断

  • ときに医師による評価のみ

  • ときにプリックテストまたはアレルゲン特異的免疫グロブリン測定

  • 除去食

医師は主に、症状が発現した経緯から食物アレルギーを疑います。通常、成人ではアレルギーが明らかです。しかし、小児の食物アレルギーを診断するのは困難な場合があります。一部の食物アレルギーは、過敏性腸症候群などの多くの消化器系の問題との区別が難しいことがあります。

食物アレルギーが疑われる場合、以下のいずれかの検査を行います。

食物アレルギーが疑われる場合、様々な食物からの抽出液を用いてプリックテストが実施されます。それぞれの抽出液を皮膚の上に一滴のせ、そこを針でつつきます。調べた食物に対して皮膚反応が起きても、必ずしもその食物に対してアレルギーがあるとは限りません。しかし皮膚の反応が一切なければ、その食物に対するアレルギーはおそらくないでしょう。

別の方法として、アレルゲン特異的免疫グロブリン(IgE)測定が行われます。免疫系は、各種のアレルゲンに反応して異なる種類のIgEを生産します。例えば、花粉を吸い込んだ後に生産されるIgEは、ナッツ類を食べたときに生産されるIgEと異なります。この測定では、血液サンプルを採取し、その血液中のIgEが検査で用いる特定のアレルゲン(ピーナッツなど)に結合するかどうかを確認します。結合が確認された場合は、そのアレルゲンに対するアレルギーがあります。

いずれかの検査で問題の食物が特定できたら、その食物は食事から除去します。食物を除去して症状が緩和されれば、その食物を食べた後に症状が出るかどうかを確認するため、その食物を再度摂取します。可能であればこのステップは経口負荷試験の一部として行います。診断は、経口負荷試験を行って確定します。

経口負荷試験では、アレルギーが疑われる食物と、牛乳やアップルソースなど他の食品も用いて検査を2回実施します。1回目は他の食品に問題の食品を混ぜ、2回目は他の食品だけを食べます。そして、問題の食品を摂取したときに症状が出るかどうかを観察します。

  • 問題の食品を食べても症状がまったく出なければ、その食品に対するアレルギーはありません。

  • 他の食品を食べたときに症状が出ず、問題の食品を食べたときにだけ症状が出たら、おそらくその食品に対するアレルギーがあります。

食物アレルギーを特定する別の方法として除去食があります。

  • 問題の食品またはその疑いのある食品のみを除去します。

  • アレルギー反応を引き起こす可能性のない食品のみを食べるようにします。

除去食の検査は、食物アレルギーを診断するために唯一行われる検査であることもあれば、プリックテストまたはアレルゲン特異的IgE検査の後に実施される場合もあります。

除去食の第一のタイプは、症状を起こしている可能性のある食物をすべて、約1週間にわたって食べないようにするというものです。

第二のタイプでは、アレルギー反応を引き起こす可能性のない食物のみを摂取する除去食で、第一のタイプの代わりに試すことができます。第二のタイプの除去食は以下のように行われます。

  • 医師が決める食事の内容に従います。

  • 指定された食べものや飲みものだけ、それも無添加のものだけを摂取します。

除去する食べものや許可される食べものが異なるため、それによって除去食も様々です。例えば、牛肉や羊肉は除去し、鶏肉が許可される場合もあります。羊肉と鶏肉を除去し、牛肉が許可される場合もあるでしょう。

除去食を続けるのは簡単ではありません。なぜなら、アレルゲンが入っているかどうか、はっきり分からない食品が多く、思いがけない食品に入っていたりすることもあるからです。例えばライ麦パンと称するものにも、たいていは小麦粉が若干使用されています。外食は望ましくありません。患者と医師は毎回の食事の材料を把握する必要があるためです。

1週間経っても症状が緩和されない場合、医師は別の除去食を勧めます。

もし症状がまったく出なければ、除去した食材を1種類ずつ献立に戻します。1種類戻したら24時間以上、あるいは症状が出るまで待ちます。これをアレルゲンが確認できるまで続けます。食べものに対して非常に重度のアレルギー反応を経験したことがある場合は、診察室で少量、物を食べるよう言われることもあります。そして、症状が現れるかどうか医師が観察します。

知っていますか?

  • 重い食物アレルギーのある人は、重度の反応が起こった場合に備えて抗ヒスタミン薬とアドレナリンの注射キットを常時携帯する必要があります。

食物アレルギーの予防

長年にわたり食物アレルギーを予防する手段として、アレルギー反応(ピーナッツなど)を引き起こすことの多い食物を幼若な乳児に与えないようにすることが推奨されてきました。しかし最近の科学的根拠から、ピーナッツを含む食品を乳児に定期的に与えることが、ピーナッツアレルギー発症の予防に役立つ可能性があることが示唆されています。このアプローチに対するさらなる研究が必要です。

子どものピーナッツアレルギーを予防する最善策については小児科医に相談してください。

食物アレルギーの治療

  • アレルギー反応を治療するための抗ヒスタミン薬およびときにアドレナリン

  • 除去食

  • ときに、アレルギー反応を抑える薬

  • ときにアレルゲン免疫療法(脱感作)

重い食物アレルギーのある人は抗ヒスタミン薬を携帯し、アレルギー反応が起こったらすぐに服用できるようにするべきです。じんま疹や腫れを鎮めるには抗ヒスタミン薬が有効です。また、重度の反応が起こって必要になったときのために、アドレナリンの自己注射用キットも携帯する必要があります。クロモグリク酸という内服する処方薬も、症状の緩和に役立ちます。

食物アレルギーがある人は、アレルギーを引き起こす食材を食事から完全に排除しなければなりません。

食物アレルギーに対する他の薬

オマリズマブは、IgE(免疫系によって作られ、アレルギー症状を引き起こします)の働きを妨げるために作られたモノクローナル抗体です。オマリズマブは、急性アレルギー反応の治療には使用されませんが、(特に脱感作療法中に)アレルギー反応を制限する方法として研究されています。この薬は注射で使用します。

デュピルマブなどの他のモノクローナル抗体も、ピーナッツアレルギーの治療法として研究されています。

アレルゲン免疫療法(脱感作)

脱感作療法は、アレルゲンを避けることができない場合に、免疫系をそのアレルゲンに反応しないように教育しようとする方法です。患者に、用量を徐々に増やしながらアレルゲンを投与します。最初に投与する量は非常に少ないため、アレルギーのある人にさえ反応が起こりません。しかし、そのわずかな投与によって、免疫系はそのアレルゲンに対して慣れていきます。その後、徐々に投与量を増やしていきます。増やす量は毎回非常に少ないため、やはり免疫系は反応しません。投与量を、前に症状を引き起こした時と同じ量のアレルゲンに対して反応が起こらなくなるまで増やします。

食物アレルギーに対する免疫療法は、典型的に経口投与で行います。これは4~17歳の人のピーナッツアレルギーに対して最も広く使用されています。他の様々な食物に対する脱感作については、現在研究段階です。

ピーナッツアレルギーに対しては、粉末のピーナッツアレルゲンを経口投与します。1日目は、医療施設で量を徐々に増やしながら5回服用します。量の多すぎるアレルゲンを早い時期に投与してしまうとアレルギー反応が起こる可能性があるため、1日目の治療は医師が観察する必要があります。その後は1日1回服用します。維持量に達するまで2週間に1回の頻度で用量を増やしていきます。通常、この方法には約5カ月かかります。用量を増量するたびに、その初回の投与を医療施設で行わなくてはいけません。維持量は生涯にわたって服用し続けます。

脱感作を維持するためには、ピーナッツアレルゲン粉末を毎日飲み続ける必要があります。また、依然として厳格なピーナッツ除去食を続ける必要がありますが、脱感作によって、知らずに食べたピーナッツに対する重度のアレルギー反応(アナフィラキシーを含む)のリスクが低下します。

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